サニブラウンはロンドン世陸で日本人初の9秒台を出せるのか
今年の日本選手権(決勝)は雨の中をサニブラウンが自己ベスト&日本歴代6位の10秒05(+0.6)で優勝。2位の多田は10秒16、3位のケンブリッジは10秒18だった。サニブラウンは前日に行われた予選で10秒06(+0.4)、同日の準決勝でも10秒06(+0.5)で走っており、3人のなかでは実力が抜けている。100m日本記録保持者で日本陸連の伊東浩司強化委員長も「前日の条件なら9秒台が出ていた」と評価するほどだ。 しかも、サニブラウンはまだ18歳。今季の急成長ぶりを考えると、ロンドンで大幅にタイムを短縮する可能性がある。城西高を卒業したサニブラウンは、今秋から米国・フロリダ大学に進学予定で、1月から練習拠点をオランダに移して、多くの五輪金メダリストを育てたレイナ・レイダー・コーチの指導を受け「走り」を“イチ”から変えてきたという。 「ストライドが大きいので、走るときに脚が流れることがあったんですけど、それをしっかり前で振り下ろせるように、今年の1月から練習してきました。スタートも以前とまったく違うと思います。2年前はのそのそ出て、そこからテンポを上げていく感じの走りでしたが、今はスタートからガツンと出られるようになりました。最初の3歩をしっかりさばいて、序盤からスピードに乗って、それをもっと上げていくようなイメージ でしょうか。後半は横にブレる癖があったんですけど、ウエイトトレーニングで体幹が安定してきたので、腕を前に振れるようになり、推進力も増したのかなというのはありますね」 高校時代から大きく進化したように見えるサニブラウンだが、現在の完成度については「ほとんどできていない」と話す。シャープになったスタート部分に関しても「5割くらい」だという。 「脚をさばくときに腰が落ちてしまったり、すぐに顔が上がったり、いろいろと問題点があります。日本選手権の決勝でもスタートして2歩目がつぶれてしまいましたし、そういう細かいところを修正していかないといけません。4~5月のレースはあまり速くなかったですけど、8月の世界選手権にピークを合わせています。日本選手権で10秒0台を出したところでまったく意味がない。世界選手権では、もっと良い記録で走れるよ うにしていきたいです」 この話をしていたのは日本選手権の翌日に行われた代表選手発表記者会見(6月26日)のとき。ここから本番までは約6週間あり、技術的にはさらに良くなっているはずだ。 メディアから9秒台について問われても、サニブラウンは「あまり9秒台を意識しているわけではないんですけど、海外選手と競り合って、条件が揃えばおのずと出てくるのかなと思っています」とそっけない。 それもそのはず、サニブラウンが思い描く夢は近年の日本人アスリートからは聞いたことがないほど、スケールの大きなものなのだ。