息子夫婦と3世帯で同居するとき、自分のやり方を押し付けていませんか?「譲ることは年寄りの知恵」と考えて
人生100年時代、現役世代を駆け抜けた後はどのように過ごせばいいのでしょうか。精神科医の保坂隆先生いわく、人生後期は無理をせず「ほどほど」をキーワードに過ごすことが大切とのこと。『精神科医が教える 人生を楽しむ ほどほど老後術』より、日常生活を元気で楽しく暮らすための知識をご紹介します。 * * * * * * * ◆同居でのお風呂の悩み 老親の家庭を心配して、たとえば息子夫婦が孫をつれて同居するというケースがあります。そんな場合、自分たちのやり方を強引に通そうとするとトラブルの原因になります。 よくあるのが「一番風呂」の話。 一番風呂が好きな男性がいましたが、あるとき、知り合いから「年寄りの一番風呂は体によくない」と聞かされました。 もちろん、医学的・科学的な理由があって、「一番風呂のさら湯は熱が伝わりやすく、肌への刺激が強すぎるから、年寄りには不向き。 また、一番風呂の浴室には湯気が立っていないため、脱衣所と浴室の温度差が大きく、脳や心臓の発作を起こす危険性が高い」とされます。 男性はお嫁さんにこの話を伝え、息子の帰りが遅いときは、お嫁さんや孫たちに先に入ってもらうようにしたのです。
◆譲ることは年寄りの知恵 「お義父さんよりも先にお風呂に入るのは申し訳ない」と遠慮していたお嫁さんでしたが、じつは、夕食の支度や子どもたちの面倒を見ているから、そうそうお義父さんの都合にも合わせていられないと感じていたようです。 「自分からはなかなか言い出せなかったので、お義父さんから話をしてくれてよかった」とホッとした様子。 こうしたやりとりが、一番風呂だけではなく、食事の時間帯や料理の献立、掃除の仕方や範囲、あるいは経済的な負担などについてもあり、日を追うごとに「ルール」ができていったそうです。 親子や家族といっても、考え方や価値観は違うものですから、我慢ばかりしていては長続きしません。「譲れないもの」もあるでしょうが、「どちらでもいい」と思えることは、意地を張らず、相手に合わせたほうが賢明です。 そうでなくても、加齢とともに誰もが頑固になりやすいといわれていますから、「譲ることは年寄りの知恵」くらいに考えて暮らすのがいいでしょう。
保坂隆