バス運休、通院難民……「公共交通の崩壊」がもたらす想像以上の大ダメージ! なぜ、経済合理性だけで判断してはいけないのか?
高齢者免許返納の影響
公共交通は都市部だけでなく、むしろ地域の生活の質を向上させる上で重要な役割を果たしている。特に地方では、都市部に比べてマイカーの依存度が高く、自分で車を保有し運転できない人たちにとって、公共交通の衰退は生活の危機を招く。 例えば、近年、高齢者が運転する車がブレーキとアクセルの踏み間違いや、一方通行車線の逆走などで重大な事故を引き起こすことが増え、社会問題となっている。このため、高齢者に 「免許返納」 を促す動きが広がっている。 しかし、これにより特に地方の高齢者は、移動の自由が大きく制限され、社会活動への参加機会が減少する。その結果、 「認知症の発症リスク」 が高まり、認知症患者の増加が社会的な負担を増大させることとなる。
移動の自由が支える人間らしい生活
公共交通の本来の価値は、経済効果だけでなく、「社会的」および「文化的」な要素にも大きく関わっている。 「移動の自由」 を保障することは、人間らしい生活を送るために欠かせない要素である。 国民全体が公共交通の本質的な価値を理解し、それを支え維持するために積極的に努力することが重要だ。 その結果として、日本はより平等で、持続可能な社会を実現できるだろう。
戸崎肇(経済学者)