バス運休、通院難民……「公共交通の崩壊」がもたらす想像以上の大ダメージ! なぜ、経済合理性だけで判断してはいけないのか?
コミュニティーバスの危機
公共交通は地域文化の育成にも大きな役割を果たすことができる。 例えば、観光地へのアクセス向上に貢献し、地域住民がコミュニティー活動に参加する手段を提供することが期待されている。特に、地方自治体が運行する 「コミュニティーバス」 は、住民同士のつながりを支え、地域文化の継承活動にも寄与する可能性がある。実際、すでに多くの地域で運行されているが、運転手不足などの理由で、運行縮小や運休、廃止が進んでいる。 近畿運輸局は、地域公共交通が廃止された場合にどれだけ追加的な財政負担がかかるかを調査しており、兵庫県南西部にある福崎町を例にしてその試算を行った。 それによると、コミュニティーバスが廃止されると、生活環境を維持するために年間 「約640万円」 の追加支出が必要となるという結果が出ている。
運輸部門のCO2排出「18.5%」
公共交通は、環境負荷の軽減にも大きく貢献することができる。 これはすでに言及したことだが、現在、持続可能な未来の実現が世界的な課題となっているため、公共交通を考える際には、経済的な効果だけでなく、環境面での貢献も重要な要素となる。なぜなら、交通部門は温室効果ガスの主要な排出源のひとつだからだ。 国土交通省によると、2022年度の日本の二酸化炭素排出量(10億3700万t)のうち、運輸部門からの排出量(1億9180万t)は 「18.5%」 を占めており、そのうち自動車が運輸部門の85.8%(日本全体の15.9%)を占める。さらに、旅客自動車が運輸部門の47.8%(日本全体の8.8%)、貨物自動車が運輸部門の38.0%(日本全体の7.0%)を排出している。 環境対策として、EVバスや天然ガスを利用したバスの導入、またオンデマンドによる乗り合いタクシーの導入などが進められている。今後は、航空業界で検討されているSAF(持続可能な航空燃料)などの、化石燃料に代わる新たな燃料の開発が進むだろう。