「ピクトグラム」では良さが伝わらない…… ワークマン、機能の「格付け」を始めた背景 対ユニクロも意識か
ワークマンが「秋冬新製品発表会」を開き、自社の衣料品の機能を「格付けする」と発表しました。テレビでは格付け番組が人気です。一般的に、企業の信用格付けや飲食店の格付けでは「AAA」や「★★★」のように信用度をアルファベットや記号で表記することが多いですが、少なくとも筆者は衣料品の格付けなどこれまで見たことも聞いたこともありません。 【画像】こんなにあったの!? ワークマンの製品タグに付いている「ピクトグラム」、新しく開発した「格付け」(全6枚) 果たして、ワークマンの格付けとはどのようなものなのでしょうか。消費トレンドを追いかけ、小売り・サービス業のコンサルティングを30年以上にわたり続けているムガマエ代表の岩崎剛幸が分析していきます。
新たに「格付け」を開始
ワークマンは8月末に2024年秋冬の新製品発表会を開催しました。メインテーマは「機能の格付け、始まる。」です。高機能で低価格なアパレルとして第一想起される企業を目指す――これがワークマンの戦略であり、何より同社の最大の強みは「機能性」にあります。 今では同社製品の機能性はプロの職人だけでなく一般客にも知られ、顧客層が広がり、1019店舗まで拡大しました(8月末時点)。2022年から展開している「#ワークマン女子」でも、機能性と低価格を売りに、毎日レジ待ちの行列ができるほどの人気になっています。 しかし、2022年4月に東京・銀座へ出店したあたりから、ワークマン製品の機能性が消費者に十分に伝わっていないのではないか? と個人的に感じるようになっていきました。デザインや「おしゃれ感」から女性の支持は集めたものの、本来の機能性を売りにしていたブランドイメージが徐々に薄れているように見えたのです。 それはワークマン自身も感じていたようで、もっと消費者に本来のワークマンの機能性を分かりやすく伝える方法はないかと模索していました。そして、その一つの手段として、商品を格付けし、グレードに分けて提案する新しい手法を、新製品の発表会で紹介していました。
4項目で5段階評価 機能性を分かりやすく訴求
ワークマンの店頭で商品を見ると、機能性を表現した商品が多いことに気付きます。商品タグには、東京五輪で話題になった「ピクトグラム」を活用しています。文字や言語に頼らず、視覚的な図記号で情報や注意を表す案内記号で、ワークマンの最も多機能な製品には14個もピクトグラムが付いています。ちなみに、ワークマンで使用しているピクトグラム数は全部で260個だとか。ただ、製品や製品タグにピクトグラムを付記しても、一般消費者(特に女性客)からは「分かりづらい」との声が多かったと同社の担当者は話しています。 発表会のスライドを見ても、消臭機能で5種類、抗菌機能で9種類など、さまざま存在します。ただ、どのピクトグラムが何を意味しているのかまでを理解するのは難しいのではないでしょうか。機能にこだわるあまり、機能の説明が複雑になり、商品特徴が逆に分かりづらくなり、消費者に伝わっていなかったのです。 そこで、新たに「耐雨度」「防寒度」「ストレッチ度」「美脚度」と4項目で5段階評価の格付け基準を作り、商品タグに格付け内容が分かる表記を付けることにしたのです。星の数で格付けを行い、その内容に応じて商品のグレードを示すことで、どこまでの雨や寒さ、伸縮に耐えられるのかを分かりやすくしました。 例えば耐雨度は「耐水圧」「透湿度」「撥水度」でレベル分け、そして耐雨度を5つのグレードに分類し、「小雨」「本降り」「豪雨」などどこまでの雨量に対応できるかを明示しています。 会社全体としてはデザイン性を高めつつも、本来の強みである機能性に特化し、より幅広い消費者にアピールするのが格付けですが、あらためて、なぜワークマンはこのような取り組みを始めたのでしょうか。そこにはワークマンの現状が関係していると筆者は考えます。