「執念としたたかな戦略がある」 退陣・総裁選不出馬の岸田首相が自民党総裁選の裏で「虎視眈々と狙うこと」
岸田文雄首相(67)の後継者を決める自民党総裁選もいよいよ最終盤となり、各種情勢調査を踏まえて“3強”とされる、高市早苗経済安保相(63)、小泉進次郎元環境相(43)、石破茂元幹事長(67)=届け出順=が、激しいトップ争いを展開している。 その一方で、水面下では、首相経験者の麻生太郎副総裁(84)、菅義偉前首相(75)と岸田氏による「キングメーカー争い」も激化しており、総裁選の結果次第で、これまでの党内権力構図が大きく変わる可能性も指摘されている。
■総裁選後の"岸田1強”への執念 その中で、永田町で最も注目されているのは、岸田氏の動きだ。8月14日の唐突にも見えた総裁選不出馬・退陣表明が、過去最多9人による今回総裁選につながったことは間違いないが、「その裏には、総裁選後の“岸田1強”への執念としたたかな戦略が秘められていた」(自民長老)とされるからだ。 現在の党内権力構図を踏まえれば、岸田氏の「最大の敵」は菅氏だ。ただ、これまで岸田政権の支柱だった麻生氏との相互信頼関係も薄れ、「菅・麻生・岸田の“三角関係”の複雑化」(同)が目立ち始めている。
特に3強候補については菅氏が小泉氏、麻生氏が高市氏、岸田氏が石破氏にそれぞれ肩入れしているとみられる一方、総裁選後の人事もにらんでそれぞれ他候補にも“保険”でもかけるという、「複雑怪奇な主導権争いを繰り広げているのが特徴」(政治ジャーナリスト)との見方が広がる。 当然、誰が新首相になるかで3氏の明暗も分かれるが、なお混迷が予想される今後5年前後の政局展開をにらむと、岸田氏にとって、麻生、菅両氏との年齢差が「大きなプラス要因」(政治ジャーナリスト)となることは間違いない。5年後でも72歳の岸田氏に対し、菅氏は80歳、麻生氏は89歳という「引退必至の高齢」(同)となるからだ。
加えて、麻生氏が率いる麻生派は、総裁選で支持候補がバラバラの分裂状態で、菅氏の率いる「菅グループ」内でも足並みの乱れが目立つ。これに対し岸田氏は、自らが率いてきた旧岸田派を「決選投票」で完全にまとめられれば、その後の権力闘争で“1強”になる可能性がある。 だからこそ、岸田氏は自ら解散した旧岸田派の“実質的領袖”にこだわり、「総裁選後の林氏への代替わりの先送りを画策している」(派幹部)とみられているのだ。