驚愕…! 五重塔の大黒柱は「地面から浮いていた」…だから、大地震でも「倒れない」奈良時代から培われた「超」技術
心柱は“大黒柱”
五重塔の中心を貫く“大黒柱”が心柱である。事実、五重塔建造の木材の中で、最も念入りに選ばれ、加工され、そして最も太いのが心柱である。 法隆寺五重塔の心柱に使われたのは、樹齢2000年以上、根元の直径が2.5メートル以上の檜である。この檜の大木を真ん中から縦に四つ割りにし、それを断面が八角形になるように削られたものが使われている。一番太い根元で約80センチメートルある。 法隆寺五重塔の心柱の全長は約32メートルであるが、それは長さ約16メートルの八角形の2本の部材をつないで作られている。 この2本の部材をつないだときに、ずれたり曲がったりしないように、また、つなぎ目が完全に合うように継手仕口(つぎてしぐち)が作られている。さらに、結合をより完全にし、心柱を補強するために、心柱の四方から添え木が当てられている。 直径が1メートルほどの丸木をそのまま心柱に使わず、わざわざ大木を縦に四つ割りにしたうちの1本を使ったのはなぜだろうか?
じつは、丸木のままの大きな柱は存在しない
芯を含んだ柱はのちにひび割れしたり、曲がったりして建物をゆがめることがあり、ひどいときには建物を壊してしまうからである。実際、法隆寺には、心柱に限らず、四つ割りにせずに芯を含んだままの大きな柱は1本も存在しない(前掲の『法隆寺を支えた木』)。 図「青龍寺五重塔の心柱」に、建立直後に撮影した青森・青龍寺五重塔の心柱を示す。この心柱は、樹齢約400年、根元の太さが約130センチメートルの青森檜葉の原木から切り出したもので、根元の太さが約64センチメートルの八角柱となっている。心柱の総高は約36メートルであるが、下から9メートル、12メートル、15メートルの3本の部材がつながれ、総重量は約4.5トンである。 五重塔の心柱は、まさに“大黒柱”とよぶにふさわしいきわめて重要な柱なのであるが、じつは、前述のように、この心柱は相輪を支持しているだけで、五重塔そのものの荷重を支えることにはまったく貢献していない。