表現の自由か、教育を冒瀆か…大学占拠し反イスラエル抗議 若者の間に広がるトランプ氏への支持【ワシントン報告⑰パレスチナ支持の学生運動】
初夏の米ワシントンでは、パレスチナ自治区ガザへの攻撃の手を緩めないイスラエルに抗議する学生による大学占拠の動きが広がった。米国は伝統的に親イスラエルだが、バイデン大統領を支える民主党は左派を中心にパレスチナ擁護の動きが強まっている。占拠は表現の自由か、それとも教育への冒瀆か。米外交の在り方や世代間対立、宗教論の文脈でも議論された。若者の間でバイデン氏よりトランプ前大統領への支持が増えている点も見逃せない。(共同通信ワシントン支局長 堀越豊裕) 【写真】トランプはなぜこんなに強い?言動は問題だらけ、でも有権者は違う部分を見ていた…ポイントは「行儀の悪さ」
▽逮捕者3千人 5月上旬、ホワイトハウスに近いジョージ・ワシントン大の抗議活動は12日目に入っていた。卒業後は政官界に進む人が少なくない名門だ。タイル張りの校舎に囲まれた芝生の広場ユニバーシティー・ヤードに約80のテントが並ぶ光景は2011年の反格差社会デモ「ウォール街を占拠せよ」を思い出させた。ウォール街の公園などにテントを並べ、格差是正を訴えた若者らの活動は当時大いに盛り上がりを見せたが、格差は今も変わることなく厳然とある。今回の活動は果たしてどこまで効果を上げるのだろうか。 「バイデン政権のイスラエル支援停止など五つの目標が実現するまで抗議を続けます」。テントに寝泊まりするジョージ・ワシントン大2年のカイヤさん(20)は声を強めた。内部の決まりで姓は名乗らない。国際関係論を専攻しているという。抗議活動を支える食事などは支援者から提供される。占拠を通じた抗議活動はニューヨークのコロンビア大やカリフォルニア大ロサンゼルス校など全米の大学に広がり、逮捕者は3千人前後に上った。
▽別世界の訴え 若者は時に政治を動かす。今回の活動も1968年のベトナム反戦と重ねる報道が多い。今年と同様、大統領選の年だった。民主党のジョンソン大統領が再選を諦め、共和党のニクソン元副大統領が制した。 だがカイヤさんら学生の訴えをどこか机上の空論と感じるのは、肩越しに裕福な親を見るからだろう。ジョージ・ワシントン大の学費は年間6万ドル(約930万円)を超える。トランプ氏の支持層に多い、大学に行っていない人々とは別世界だ。 大学の占拠には当該の学生に加え、外部から活動家らも潜り込んでいたようだ。ジョージ・ワシントン大のエレン・グランバーグ学長は「過去にあったデモ活動と異なり、今回の占拠は大学の空間の無許可使用であり、大学の各種政策に違反している」と厳しく接した。警察を導入し、数日後にはテントが排除された。 反イスラエルの抗議活動は大学当局にとってシリアスな問題だ。これまでもハーバード大やペンシルベニア大の学長らが議会に呼び出され、イスラエルが一方的に悪者になっていると非難され、辞任に追い込まれている。