au TOMSはどうしてそんなに強いのか? GT500最大の疑問に迫る。鍵となるのは“積み重ね”……そこに「悟空とベジータ」が応える最強布陣
■“悟空とベジータ”、最強のコンビ
さらに36号車の車両セットアップという点では、関係者から取材を進めるうちに興味深い話が出ていた。36号車はブレーキング時に車両が激しく跳ねているように見えるという指摘だ。 これはより強力なダウンフォースを稼ぐために、36号車は車高を低く攻めていることが原因なのではないかとも考えられた。吉武エンジニアにこの点を尋ねると、36号車はコーナリング時のダウンフォースを稼ぐためにブレーキング時のスタビリティを犠牲にしている部分があるが、それはひとえにドライバーの技術あってこそだと語った。 「去年は結構マシンが跳ねていましたが、これはドライバーの腕という面が大きいですね。跳ねたクルマに乗れないドライバーもいますから」 「(車高が下がると)コーナリング中はダウンフォースが出ているのでいいのですが、ブレーキング時に下がってくることで跳ねてしまう部分もあります。コーナーを速くするために、ブレーキのところを犠牲にしているというか、犠牲になっちゃうというか……そこはドライバーがうまくねじ伏せて乗ってくれているので速いんです」 「(ブレーキング時に跳ねると)接地がなく、フロントロックをしてしまったりしますから。これが他のドライバーだったら『乗れないから車高を上げてくれ』と言われるレベルだと思います」 吉武エンジニアは、昨年タイトル獲得に貢献した坪井と宮田、そして今季から加入した山下を、人気アニメ『ドラゴンボール』のキャラクターになぞらえて次のように評した。 「坪井選手は今一番GTで一番速いドライバーだと思っています。2021年にチャンピオンを獲った時から速さと強さがありました。頭も良いし、燃費走行だったりタイヤのマネジメントだったり、細かいことを言わなくても自分で考えてやってくれるので、何も不満はありません」 「昨年のコンビはドラゴンボールで例えるなら、坪井選手が孫悟空で、何でも強いタイプ。宮田選手は孫悟飯タイプで、潜在能力が高いですが戦闘の経験値はやや低いと。ただ去年にかなり成長をして、強くなりましたね」 「ヤマケンはキャラクターが違っていて、ドラゴンボールで言うとベジータですね。悟空と同じくらいの強さがあって、速さも経験値もあって、今のGTでは最強のふたりじゃないですかね」 チームとしての実績の積み重ねと、ドライバーの実力との掛け算によってGT史に残る活躍を見せている36号車。連覇のかかる吉武エンジニアに今季の意気込みを聞いた。 「目標はチャンピオンですが、そんなに簡単にいくとは思っていません」 「最近では岡山で勝ったチームがチャンピオンになれないというジンクスもあります。ジンクスというよりも、今のサクセスウエイトのレギュレーションでは必然だと思っています。最初にウエイトを積んだチームが(第7戦の)オートポリスまでそれを降ろせないというのは、やはり不利なんですよね」 「ただ、そのハンデを背負ってでもチャンピオンを獲りにいけるように頑張りたいです」
戎井健一郎
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