岡本多緒(TAO)トップモデルからハリウッド映画のヒロインに「憧れのヒュー・ジャックマンに会いたくて」
■ヒュー・ジャックマンに会いたくて映画のオーディションへ
2013年、映画「ウルヴァリン:SAMURAI」でハリウッドデビューを果たし、ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンの恋人・矢志田真理子役を演じることに。 「俳優になるということは全然考えていなかったんです。先ほども少しお話ししましたが、両親がかつて役者をやっていて。私たち子どもが産まれ、十分な稼ぎができずやめてしまったんです。子ども心にネガティブなイメージを持ってしまっていたし、何よりそんな簡単な 職業ではないことはわかっていました。 でも、モデルとしてある程度人気が出てくると、『じゃあ次は女優さんだね』と言ってもらったりするんですよね。モデルは女優になるためのステップだってみんな考えているのかなって。それがちょっと悔しくて。 私はモデルとして本気で、真剣にやっていたし、プロとしてのプライドを持っていたので、一生というか、やれるだけモデルとして生きていくぞと思っていたんですけど、そんな時に突然『ウルヴァリン~』のオーディションの話があって。 最初はお断りするつもりでいたんですが、『ヒュー・ジャックマンの恋人役よ』と言われたので『じゃあ、やりたいです』って(笑)。やりたいというか、『ヒュー・ジャックマンに会ってみたいです』みたいな本当に軽いノリでしたね。 決まるとも思ってないし、記念受験みたいな感じで受けることにしたんですが、台本も一切読んだことはなかったですし、そもそも『どうやって読むの?』みたいな。 ト書きとセリフ、そういったこともわからないままオーディションに参加してみたんですが、会場が『いいね!』みたいな雰囲気になって。『いいの?これで?』と逆に不安になりました(笑)。 そこから本当にトントン拍子に話が進んで、気が付いたらロサンゼルスでジェームズ・マンゴールド監督と面接をして、プロのヘアメイクさんがついてのカメラテストもあって。 そのあとでまたニューヨークに帰り、最後のオーディションをしたんですが、ヒュー・ジャックマンとのケミストリーリーディング、読み合わせでした」 ――憧れのヒュー・ジャックマンと会っていかがでした? 「からだも大きくて、本当にウルヴァリンのようだなというのが第一印象でした。ヒューがちょうど『レ・ミゼラブル』(トム・フーパー監督)を撮り終わったタイミングだったので、ミュージカルファンの私はウルヴァリンそっちのけで、その話をしていたから、彼はポカンとしていましたね。『今、その話なの?』みたいな(笑)。 その最後のオーディション用に確か10ページ前後の英語のセリフを覚えていたんですが、ヒューから『アドリブでいきたい』という要望が出て。ただ、当時の私は『アドリブって何ですか?』という状態でした。 何とか一生懸命覚えてきたセリフにかじりつくんですけど、ヒューは逆に一生懸命そこから引っ張り出してアドリブでやらせようとするわけですよ。参ったなあ…と思いながらも必死にしがみついて。 そして気が付いたら、アドリブにのめり込んで、最終的にその台本には書いてなかったキスをしていて。 今の時代だったら突然そんなことはできないと思うんですけど(笑)。カットがかかった瞬間、椅子から崩れ落ちて『何だったんだろう?今のは』みたいな感じでしたね。でも、自分の人生で新しい何かが始まるような感覚というのはありました。 それから2週間後だったかな。決定したというニュースが届くんですが、その間もやっぱりすごくワクワクしながら、結果の連絡を待っていたのを覚えています。 最初、キャスティングの人がすごく喜んでくれていて。実は何年も探していたのに、役に合うキャストが見つからない状況だったそうなんです。 ようやくスタジオのOKも出て、プロデューサー陣も俳優陣もみんな『TAOで行こう』という決着になったと。モデル事務所の社長もすごく興奮しているから、私はわりと冷静だった気がしますが、すごくうれしかったです」 ――撮影が始まるとガラッと生活も変わったでしょうね 「その1カ月後ぐらいにオーストラリアに入ってリハーサルを始めて…という準備期間の短いスケジュールだったので、撮っている瞬間もそうですが、事の重大さに気づかないまま放り投げられたというか。今思えば、逆にそれが良かったかもしれません」