鶴屋怜が朝倉海のタイトル挑戦に「正直ムカついた」本当の理由「誰であろうと『負けろ』と思う」
新春インタビュー企画Part 3
「日本人初チャンピオンは俺がなります」。朝倉海のUFCフライ級タイトル戦直後、決意ともとれるポストが賛否を呼んだ。投稿をしたのは3歳からレスリング選手として活躍する10戦無敗のUFCファイター・鶴屋怜(22=THE BLACKBELT JAPAN)。このベルトにかける思いは誰よりも強いと豪語する。鶴屋にとって“UFC”はどんな舞台なのか。新春インタビュー企画Part3。(取材・文=島田将斗) 【写真】「若い選手の目標になれば」 山本KIDに憧れ購入した鶴屋の愛車外国車 格闘技から気持ちが遠ざかったときにたまたま見たのは当時のUFC王者コナー・マクレガーの一戦。MMAをよく知らなかった少年は思わず父に「これ何?」と聞いた。あれから10年、ずっとそのベルトを追い続けている。 試合でも興奮したが、中学生の鶴屋をとりこにしたのはその生活だった。マクレガーはサッカー、テニス、ゴルフなどメジャーなスポーツ選手が多く入る世界スポーツ選手の長者番付にランクイン。「総合格闘技選手なのに」と衝撃を受けた。 「こんなスーパースターになったら人生最高じゃん」が原動力だったが、いまはまた違う意味をUFCのベルトに見出している。 「お金はもちろん大事ですけど、いまはベルトの“価値”で欲しいと思っています。この前朝倉海選手も挑戦してダメだったし、いままでも何人も挑戦してダメだった。価値がどんどん上がっているんです。だからそれを欲しいって欲が強いですね」 さらに「例えばですけど、前回のタイトル戦で朝倉海選手が獲って、それを返上して俺が獲っても価値はそんなにないと思うんです。だから絶対に俺が取りたいんです」と熱くなった。 2021年の18歳でプロとしてのキャリアをスタートした鶴屋は昨年2月に「Road To UFC シーズン2」のし烈なトーナメントを制しUFCの契約をつかみ取った。そして同6月にカルロス・ヘルナンデスと対戦しUFCデビューした。 まず感じたのは団体のサポートの手厚さだ。口に入るものは徹底的に管理され、塩抜き用の食事や、体に良いサプリなども支給されたという。 「UFCではカロリーメイトみたいな日本では食べられる健康食品も食べてはいけないんですよ。ドーピングとかないクリーンな状態で本当の強さを試せる。RIZINの話ではなく、中東の団体では結構普通に(ドーピングを)やってるっていう噂も聞くので安心ですよね」 金網の大きさ、観客の雰囲気もこれまでと違う。「すごく気持ちよかった」と笑顔に。「試合終わったあとも外国人が『いい試合だった!』ってみんな話かけてくれたりして。ファンの層も全然違うなと、すごい数が見てるんだなと思いましたね」と振り返った。 フィニッシュを誓っていたが結果は判定勝ち。UFCのレベルの高さを痛感した。 「“UFCだから”ではないかもしれないんですけど、選手の意識が違いますね。相手も試合で負けたらリリースの可能性あるし、本気度というか絶対にフィニッシュされないために命がけでやってるというのがすごく伝わってきました。だからこそ俺ももっとフィニッシュできるように本気で練習しないといけないなと思ったんですよね」 鶴屋が悔しいスタートを切るなか、日本では格闘技イベント「RIZIN」でバンタム級王者だった朝倉海がベルトを返上し、UFC挑戦を大々的に表明した。日本最大プロモーションの“顔”に用意されたのはデビュー戦でのフライ級タイトル戦だった。 「あのときは正直、めちゃくちゃムカつきました。何のために俺が努力して『Road To UFC』を上がってきてるんだっていう気持ちは強かったです」 SNSには「勝っても負けてもこの階級から逃げるなよ」と思いをぶつけた。 「自分の中ではチャンピオンになっても、ならなくても、フライ級の減量は絶対きついと思いました。(朝倉は)バンタム級にあげるつもりだと思う。でもタイトル戦、1回のために頑張るのは違う。フライ級の選手はきつい減量をして勝利を積み上げているんです。他の選手からしても(いきなりタイトル戦は)めちゃくちゃ悔しいと思います。だから『逃げるなよ』と」 さらにこう続けた。 「俺よりも絶対達郎くんの方が悔しいと思ってるはず。ランキングに入ってるし、いまの俺よりかはタイトル戦も達郎くんの方が近いわけだし、ロイバルに勝てばタイトル戦って雰囲気だったから」