なぜ日本では更年期障害の「ホルモン補充療法」が普及しないのか?理由を知るための手段のひとつ「学会」でのリスキリングとは
最終目的は「知識を得て、自分の健康管理を自分で選び、行えること」
――HRTは乳がん、血管系疾患のリスクをあげてしまうという忌避感があります。 まさにWHIがその印象を作りました。実際は、閉経直後すぐにHRTを開始した場合、骨粗鬆症だけでなく、冠動脈疾患など血管系イベントも抑えられるデータが出ています。何よりHRTが女性の老化を先延ばしするというのは本当で、HRT未実施ならば閉経後10年か15年で老化の症状が出てきてしまうところ、続けている人は5歳10歳若く見えてきます。HRTが女性にとって高齢社会を乗り切るための大事なアンチエイジング手段であることは間違いありません。 本来HRTは更年期障害を治療するために研究されてきたのですが、いまや女性の高齢期の健康をサポートするために必要という考え方に医学界がシフトしています。とはいえ、更年期障害の治療そのものは、保険点数が低いという仕組み上の問題もあり、積極的な治療が全国どこでも受けられるとはいいがたい状態です。 ――実際、私が深く更年期障害の取材を始めたきっかけは、2019年に都内ですら3つのクリニックでHRTを断られたという体験がベースです。 ですが、アンチエイジングというキーワードで考えると、ホルモン治療は男性にも女性にも非常に重要な治療手段です。一般の人にもそれを認識してもらいたい。年をとるのは自然なことだと思っているけど、いまや加齢そのものが病気だという考えに医学界はシフトしています。老化というのは病気であり、老化しないように暮らしていく必要がある、このことを一般の人に認識してもらう必要があるのです。 ネットやSNSで間違った知識が拡散する中、自分で正しく判断できる知識を持ってもらいたいというのが、当学会に皆様をお誘いする理由の一つです。参加しても最初はちんぷんかんぷんかもしれないけれど、聞いているうちに耳学問でわかってくるものなのです。 ――それは確かに。私も最初、さっぱり意味がわかりませんでしたが、何度も聞いているうちに理解がより容易になっていきました。 でしょう? ですから一般の方々にどんどん参加して正しい知識を得て、ご自分の健康維持にどんどん役立てていただきたい。創設理事長の小山嵩夫先生がメノポーズカウンセラー制度を作る際も、受験資格は設定せず、勉強して知識を得ることを重視しました。試験内容が多岐に渡り難しいものの、落とすための試験ではありませんから、更新までに認定単位を多くとることを条件に合格とする弾力的な運用も行っています。 勉強して、職場や地域などで周囲の人にその知識を提供していただくことが重要です。メノポーズカウンセラーを志す方の中には自分自身が大変な更年期症状を経験した方が多数います。どこで診察してもらうかの選択からつまづき、中にはキャリアを諦め仕事を辞めた人も少なくなくありません。正しい知識をきちっと持ち、また学会で横のつながりを得てお互いに実践方法を共有することで、活動に広がりが出るように感じます。