AARかVARか?どうなるJリーグ審判誤審の防止対策
Jリーグでは当初、AARの導入を進めてきた。しかし、昨夏のワールドカップ・ロシア大会でVARが採用され、ヨーロッパをはじめとして世界的な潮流となったことで、今シーズンからVARに舵を切っている。今後はYBCルヴァンカップの決勝トーナメント全13試合と、J1参入プレーオフ1試合で試験運用される。 しかし、VARの導入に関して国際サッカー連盟(FIFA)は厳格な手続きを定めていて、運用実績を含めてさまざまな要件をクリアする必要がある。現状では2021シーズンからの導入を目指していて、前倒しが可能かどうかも含めて、小川委員長は言葉を選びながら慎重に言及した。 「Jリーグが(導入の)判断をされたときに、僕らが対応できる状況を準備していく。それしか言いようがないし、それ以上は何を聞かれても答えられない」 騒動を招いた今回のゴールの得点者は仲川になったが、映像で確認すればオフサイドだったことがわかる。限られた条件のなかで真実に近い判定をくだすためには、どのような手段が最も有効なのか。審判団の力量を向上していくしかないと、小川委員長は原点回帰を唱える。 「担当審判員を対象としたセミナーや研修会を、たとえば平日の夜に2時間集まるといった形で、組織としてもっと開催していかなければいけない。毎週のように試合がある環境のなかで(努力を)積み重ねて、人としての力をあげていくことに尽きると考えています」 マリノス対レッズの問題の場面にしても、縦へ抜け出した遠藤の次のプレーを松尾主審が予測しポジションをペナルティーエリアの左側にまで移していれば、他の選手たちのブラインドになることなく、ゴールの右側付近で起こった事例を確認できた確率が高まる。セミナーや研修会の場で、騒動から得た課題をミスとして受け止め、防止策などを忌憚なく話し合っていく。 たとえVARが前倒しで導入されたとしても、あくまでも審判団の判定を補助する制度であり、肝心の目視レベルが低ければ意味をなさない。AARにしても然り。ゆっくりとした歩みに映るかもしれないが、それでもJクラブや実際にプレーする選手たち、スタジアムへ足を運ぶ、あるいは試合を視聴するファン・サポーターの信頼を勝ち取る努力を根気強く積み重ねていくしかない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)