五木ひろし 新たな挑戦「無謀かもれないが、自信はあります!」藤山一郎、美空ひばり…レジェンドの名曲を10日間で歌い継ぐ!
◆1人目は藤山一郎さん 初日は藤山一郎さんです。古賀メロディをこれほどきれいにきちんと歌った方はいないと思うんですよね。最初に藤山一郎さんにお会いしたのは、たぶんNHKの紅白だったと思います。まさにNHKの顔でしたよ。昔はNHKに出演できるかどうかについては、オーディションがあって、審査員の前で歌わなきゃいけないんだけど、藤山さんはずっと審査員をなさっていました。だから、藤山さんに認めてもらえなきゃ、出られなかった。幸いにも僕は一度で受かったけれど、なかなか受からない人もいました。それなりに厳しかったですよ。 藤山さんは本当に身軽な方でね。ジェントルマンというイメージがあります。 昔はクラシック出身の歌手が多くて、流行歌を一段下に見ていた。音大に通っていた藤山さんは、学校に内緒でレコーディングしたそうです。 藤山一郎さんがすごいのは、古賀メロディだけじゃなく、服部メロディ、古関メロディなども歌っていることです。普通は専属契約があるから、ありえないでしょ。でも、藤山さんはよほどの歌唱力が作曲家から見てとても魅力的だったんでしょうね。どんどん引き抜かれたんですから…。 いつも楽譜に忠実に正確に歌っています。難しい言葉だとしても、その日本語をしっかり発音しているから、とても聞き取りやすい。僕はこれが基本だと思っています。
◆美空ひばりさんと三橋美智也さん 2人目は、美空ひばりさんです。ひばりさんはヒット曲が多すぎて、選曲に悩みました。はずせないのはA面デビュー曲の『悲しき口笛』。これはひばりさんが主演を務めた映画の主題歌なのですが、当時、ひばりさんは12歳。やっぱり天才だね。映画はひばりさんの故郷でもある横浜が舞台。ぼくも「よこはま・たそがれ」で世に出たからなんとなくご縁を感じます。 ひばりさんの曲はどれを聴いても大ヒットしたという印象がある。ほとんどの曲は歌詞を見なくてもいまだに歌えるんだから、昭和のヒット曲ってすごいよね。ひばりさんも本当に歌がうまい。小さいころから、大人の歌を歌えたわけだし、英語の発音も素晴らしかった。おそらく耳がよかったんでしょう。 晩年、いろいろあって、病に侵されて苦しんだひばりさんですが、ひばりさんが苦しいときに、僕がちょうど結婚して長男が生まれて幸せに酔いしれていたということを思うと申し訳なかったなという気持ちが今でもあります。そんな気持ちも込めながら、今回も熱唱するつもりです。 3人目、つまり5日目に登場するのが三橋美智也さん。僕が最高にいい声の持ち主だと思っている歌手です。子どものころ、ラジオにかじりついて三橋さんの「哀愁列車」や「古城」などを聴いては歌っていたんですが、まさに僕が歌好きになった、そして将来は歌手になりたいと思った原点です。 三橋さんは日本全国の民謡を歌い継いで、民謡というものの存在を世に広めた功績も大きいですね。こぶしは回すけれど曲を崩すことはない。そんな真面目な歌い方も大好きでした。