だれでもプロ顔負けの大鉢にできる!?エビネ育種50年の達人に聞く大株仕立てのコツ【趣味の園芸1月号こぼれ話・前編】
『趣味の園芸』2025年1月号の特集「『きれい!』が見つかる ラン」では、華やかな洋ランたちをしのぐほど色鮮やかなエビネについて、育種家の山本裕之さんに紹介していただきました。 ウェブだけで読める「こぼれ話」では、誌面に紹介しきれなかったエビネの栽培や日本のランについてご紹介します。前編は冬の花の祭典「世界らん展」で見かけるような大株仕立てについてです。 みんなのエビネの写真
「大株仕立て」は、だれでもチャレンジできる!?
編集部(以下、編):テキストでは4号程度の開花株から育てる方法をうかがいました。2022年の「世界らん展」で山本さんが日本大賞を受賞されたエビネは、10号鉢の大株仕立てで、花茎も30本以上ありましたね。あんな立派な株を目指すのは、やはり難しいでしょうか。 山本裕之(以下、山):そんなことありませんよ。そもそも、うちは農場全体で東京ドームの1.5倍の広さがあるので、全部をていねいに管理するのは無理なんです。水やりもスプリンクラーですから、水が多くかかる鉢も、若干少ない鉢もある。でも乾湿の限界値がわかっているので、ほどほどに育つ管理の幅に収まるようにしているんです。1鉢ずつ状態をみて管理してあげられる趣味家さんのほうが、ずっと立派なつくりの株に育てられると思いますよ。 編:花茎が1本の4号鉢からはじめて、どのくらいで10号サイズまで育てられますか? 山:だいたい10年くらいでしょうか。 編:時間がかかっても挑戦してみたいです。 山:そもそも大株に育てはじめたきっかけは忙しさなんです。株が鉢にぱんぱんに育つと、根をほぐして植え替えたり株分けしたりするのが以前の常識でした。もう25年も前のことですが、株が大量にあって手が回らなくて。ほうっておくと株がいじけて花が咲かなくなるので、根鉢をくずさず鉢増しして急場をしのいだんです。 編:それを繰り返すうちに、だんだん大鉢に? 山:そう。やってみたら育ちがすこぶるよかったんです。栽培鉢は側面からの乾きをなくすために、下に穴のあいた普通のプラスチック鉢を使って、鉢内が根でいっぱいになったら大きな鉢に鉢増ししていくのがコツです。この方法だと根を傷める工程が軽減されるので、体力を落とさず早く大株に育ちます。