緑茶飲料、2024年春は各社が大型リニューアルする異例の事態、市場低迷要因の“どれも飲みやすい”を脱し差別化戦略に転換
飲料各社は2024年春、緑茶飲料の大型リニューアルを相次いで行い、小売店の棚に並び始めている。3月12日にサントリー食品インターナショナルの「伊右衛門」、4月2日にアサヒ飲料の「颯」、4月9日にキリンビバレッジの「生茶」がリニューアル発売され、4月15日にはコカ・コーラシステムの「綾鷹」も中味・パッケージを刷新して市場に投入される。 なぜ、各社が緑茶飲料のテコ入れを一斉に行い、差別化を進めているのか。それは、苦くて渋い印象のあった緑茶飲料が、近年は技術向上や利用者のニーズに合わせた味覚に合わせたことなどにより、“どれも飲みやすい”商品となり、消費者にとって差別化された点が伝わらず、陳腐化したことが大きいといわれる。 緑茶飲料は、生活者の健康ニーズを捉えて伸長を続け、清涼飲料市場の中で最も販売数量の多い無糖茶飲料を代表するカテゴリーだ。しかし、2020年から伸び悩んでおり、2023年も無糖茶飲料カテゴリー全体で前年比98.9%、緑茶飲料は98.4%と低迷している(出典:食品マーケティング研究所)。 キリンビバレッジのマーケティング部長の成清敬之氏は次のように語る。「緑茶カテゴリーは厳しい状況が続いている。緑茶としてのおいしさへのニーズ(物性価値)が一定程度満たされたことで、各ブランドの差別性が弱まり、ペットボトル緑茶への期待が低下している」「われわれの調査では、利用者から“昔と違って、どれ買ってもおいしいので、安いのを買っちゃってます”などの声が寄せられている」。 そこで、飲料各社は自社ブランドならではの価値づくりに取り組み、味や見た目の差別化を図っている。
〈「キリン 生茶」パッケージを大刷新、生活を彩る“モノとしての価値”を提案〉
キリンビバレッジは、4月9日から「生茶」を8年ぶりに大きくリニューアルした。ラインアップは600mlペットボトル他9品(ラベルレス除く)。パッケージ、中味、コミュニケーションの全てを変えている。特に、印象的なのはパッケージだ。「Life Tea」をコンセプトに、飲む瞬間だけでなく、持ち運ぶ時や置いている時も一緒に過ごす存在であることを念頭に設計したという。 ボトルは新たに瓶のような流線形の鶴首が特徴。デザインは、緑茶の固定観念にとらわれない白ベースのラベルに雫のアイコンを配し、幅広い世代が手に取りやすいシンプルなものにしたとする。同社の成清氏は、「生茶」の戦略について次のように話す。「日常に近い存在であるペットボトル緑茶だからこそ、おいしさと、お客様の生活を彩る“モノとしての価値”をつくり魅力を高めていく」。 中味は、緑茶の抽出液を1度凍らせることで、新茶のようなあまみを増幅させる新技術「凍結あまみ製法」を導入した。さらに「微粉砕茶葉」を現行品の約3倍に増量することで、“緑茶感”と“飲みやすさ”を両立させたという。同社マーケティング部の飯髙宏美氏は、「新技術により生茶史上最高のおいしさに仕上がった」と話す。4月8日から14日には、「NAMACHA GREEN TEA STAND」を東京・表参道で展開し、リニューアルした「生茶」を無料提供している。より多くの人に緑茶そのものの魅力を伝えるねらいだ。