緑茶飲料、2024年春は各社が大型リニューアルする異例の事態、市場低迷要因の“どれも飲みやすい”を脱し差別化戦略に転換
〈「綾鷹」650mlへ容量アップ、“淹れたて一杯目のおいしさ”目指す〉
コカ・コーラシステムは、4月15日から「綾鷹」を7年ぶりに大刷新する。ラインアップは650mlペットボトル他6品。新たな味わいとデザインを採用するほか、販売構成比の大きい中容量サイズは、これまでの525mlから650mlへ増量する。味わいは、生活者が求める嗜好に合わせ「淹れたて一杯目のおいしさ」を目指したという。茶葉選定を一から見直し、旨み豊かな茶葉を選定することで、従来品に比べ旨みが約40%増加したとする。 日本コカ・コーラ社マーケティング本部緑茶事業部部長の助川公太氏は、「今回一番大事にしたのは、旨みと、飲み飽きない軽やかさのバランスだ。その点が“綾鷹”ならではの差別化ポイントだと思っている」と話した。また、同商品の開発に協力した京都・宇治の老舗茶舗「上林春松本店」の第15代上林春松氏は、次のように語る。「消費者ニーズの変化のスピードは目まぐるしい。“綾鷹”は現行品の味わいの評価も高かったので、中味を変更するのは勇気のいる決断だったが、高い完成度に仕上がり、大変満足している」。
〈各社の差別化戦略で緑茶飲料の新しい価値を提供できるかが成長のカギ〉
一方、カテゴリートップシェアの伊藤園「お~いお茶」は、大手各社のような大型リニューアルは予定していないものの、もともと季節ごとに味わいを若干変化させ、その時々に合った製品設計に取り組んでいるという。また、契約栽培の茶葉の使用比率を年々高め、品質向上に取り組んでいる。 緑茶飲料は、生活者がゴクゴク飲めるすっきりした味わいを求める傾向になったことや、各社の技術力向上により、どれも飲みやすい同じような商品になって陳腐化していた。今春の各社の大型リニューアルは、日本人にとってかけがえのない“ソウルドリンク”ともいえる緑茶の価値を高めようという動きだ。 日本コカ・コーラの助川氏は、「各社が緑茶飲料のリニューアルを積極的に行い、それぞれの良さをお客様に提案することは、緑茶飲料市場自体を大きくできるという面で非常に歓迎すべきことだ。我々も乗り遅れてはいけないと考えている」と話す。飲料各社は、緑茶飲料市場の活性化に向けて、取り組みを強化している。
食品産業新聞社