インドからの訪日客が急増、その現状と売れ筋商品とは? サービス開発の裏側と、新市場としての可能性を取材した
インド人参加者向けに「ターリー食」を開発
サンライズツアーでは、初めて日本を訪れる人が多い一方で、将来的な潜在性が高いことから、インド人向けのサービスとして、今年7月に「富士箱根日帰りツアー」のランチで、インドの定食「ターリー食」の提供を始めた。「ターリー」とは、大皿という意味で、インド、ネパールなどの代表的な料理の形態。いくつかの料理が、大皿のうえにまとめられて提供される。 かねてからインド人参加者から希望があったことから、JTBGMT社員がインドに赴き、JTBインドの担当者とともに、現地のシェフと開発を進めた。カレーの種類や付け合わせなど何度も試作を繰り返し、ツアーのランチとして、日本食のしゃぶしゃぶ、ベジタリアン食、ムスリムフレンドリー食に加えて、ターリー食をオプションとして加えた。 鈴木氏によると、インド人は、ムスリムのような厳しい食事制限はないが、「日本滞在中、日本食は1回か2回体験できればよく、あとは自国で慣れ親しんだ食事が食べたいというニーズが高い」。日本食は今や訪日旅行のキラーコンテンツとなっているが、インド人に限っては訴求力はまだ高くなく、「まだチャレンジの領域」(文野氏)。 「とにかく安心して食べたいという人が多い」(鈴木氏)。しかも、インド人シェフが作ったカレーを求めるという。そこで、サンライズツアーでは、日本のインド料理店のインド人シェフに協力を依頼。現地インド現地で試作したレシピで作ってもらい、ランチ会場のホテルにケータリングを頼んだ。 その反響は大きく、インド人参加者からは「日本で4日間、食事をしたが、このツアーの食事が一番美味しかった」との声もあがった。また、意外なことに、インド人以外の参加者からもターリー食のオーダーが入り、1日8~10食が出る人気ぶりだった。 JTBGMTでは今後、インド人旅行者の参加が多い京都・奈良のツアーでもターリー食を提供していく考えだ。
今後はインド人訪日客の地方誘客も
航空座席供給も増加している。JALは、今年10月27日から羽田/デリー線と成田/ベンガルール線の2路線でインディゴとの共同運航を開始した。ANAとエア・インディアも、ANAの成田/ムンバイ線およびエア・インディアの成田/デリー線で共同運航を行っている。日本とグローバルサウスの有力国インドのつながりは今後ますます強まると予想されている。 ただ、鈴木氏は「インド市場の情報が限られているために、インド人旅行者の対応に迷っている日本のサプライヤーも多くみられる」と話す。そのうえで、「潜在力は非常に大きい。今後は、さまざまなサプライヤーと協力して、受け入れ体制の拡充を進めていきたい」と強調した。 JTBGMTでは、「訪日客の地方分散は使命」(鈴木氏)として、ゴールデンルートに加えて、新たに「北海道アドネイチャールート」「東北ディスカバーリールート」「レインボールート(東京から北陸)」「せとうちシーニックビュールート」「九州オーセンティックルート」の5ルートの開発に取り組んでいる。 2025年、北海道をロケ地としたボリウッド映画「ONE DAY」の公開が予定されている。「次は、北海道を狙いたい」と鈴木氏。インド人旅行者の地方への誘客はこれからだ。 トラベルジャーナリスト 山田友樹
トラベルボイス編集部