「箱根駅伝リクルートへの影響は…」高校駅伝“留学生3km区間規制”で長距離界に起こる「変化の予兆」とは? 現王者・佐久長聖駅伝部監督に聞く
駅伝界でたびたび議題に挙がる「留学生問題」。今年は高校駅伝で大きなルール改正が行われる。これまでも様々な試行錯誤が行われてきた駅伝と留学生の歴史だが、現場で戦う指導者たちはその変化をどう感じているのか。昨年の全国高校駅伝チャンピオンである佐久長聖高(長野)の高見澤勝監督に話を聞いた。<前後編の後編/前編を読む> 【貴重写真】「えっ!今って坊主じゃないの…?」強豪・佐久長聖高の“長髪ランナー”たち…「まるで修行僧」大迫傑など歴代OBたちの坊主頭&都大路で爆走するライバル留学生たちの走りも見る 昨年発表された高校駅伝の「2024年大会から男女とも留学生の起用は最短区間に限る」というルール改正。これまでは男子では8km区間、女子では5km区間と2番目に長い区間を担うことが多かった(※最長区間への起用は2008年に禁止)が、今後は男女とも最短区間である3km区間に起用が限定される。留学生が担う区間距離が減ることで、レースへの影響力が減ることが予想される。
留学生の「区間規制」で起きつつある新潮流
実はそのルール改正を受けて、すでに留学生を擁するチームに例年とは異なる傾向が見られているのだという。 「インターハイに向けた各県大会の結果を見ると、これまであまり各校が力を入れていなかった800mや1500mに留学生が出場するケースが目につきます。これは駅伝を見据えながら、これまでよりも短い距離の強化に重点を置いてトラックレースに臨んでいるのかなと思います」 現在、各地区での予選真っ最中である今年のインターハイ路線における例年との違いをこう見るのは、昨年の全国高校駅伝の王者である長野・佐久長聖高駅伝部の高見澤勝監督だ。佐久長聖高はこれまで、留学生を擁さない日本人ランナーだけのチームで、3度の全国制覇に輝いている。 こういった留学生の「区間規制」に端を発した潮流の変化は、高校陸上長距離界にどんな影響を及ぼすのだろうか? 高見澤監督が一例として挙げたのが、2008年の都大路の男子1区だ。この年は留学生の1区10kmへの起用が禁止になって初の全国高校駅伝だった。 「この年はエース区間である1区が超スローペースになったんです。それまでは留学生が飛び出して、そのまま有力な日本人ランナーも流れに乗ってハイペースの展開で進むことが多かった。でも、その年にバサッと留学生が走れなくなった関係で、一気にペースが落ちて牽制し合う形になったんです」 当時、同校のエースは村澤明伸(東海大→SGH)だったが、レース前にスローペースを見越した両角速監督(当時、現東海大監督)はあえて村澤を準エース区間の3区に配置し、千葉健太(駒大→富士通)を1区に抜擢した。 「村澤はフロントランナーだったので、スローペースの1区を走ったら集団を引っ張らされる可能性が高かった。それだったら自分のペースで行ける3区において、1区は千葉を起用して、集団の中できちっと確実に繋いでもらおうと、そういう区間配置をしました。当時はエースを1区以外に置くケースはほとんどなかったので、結構、他校から『おっ』と思われたみたいです」 そして、今年のような留学生ランナーの「中距離重視」路線が続けば、駅伝だけでなく高校生ランナーにとってトラックレースの主戦場であるインターハイの5000mでも同様の事態が起こる可能性があるという。 「仮に留学生が駅伝を見据えて1500mなどの中距離種目を重視するようになれば、5000mに出場する留学生が減って、日本人ランナーだけになるかもしれません。そうなれば勝負を重視して2008年の都大路の時のように、牽制し合ってスローペースになる可能性も高い。特にインターハイは真夏ですしね。 そうなると実力のある日本人ランナーがいても、なかなか1人で引っ張り切ることは難しい。ラスト勝負になれば走力だけで結果はわかりませんし、最後にキレのある選手が有利になってくる可能性もあります。そうやって全国レベルの大会の結果に影響が出てくるかもしれません」
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