トヨタを悩ます商用車再編の「破談危機」、日野自動車が過去最大赤字に転落で前途多難
● 日野自動車が過去最大赤字の見通し トヨタはどうする? 日野自動車が自動車メーカーの中で先陣を切って発表した2024年4~9月期連結決算は、最終損益が2195億円の赤字となった。北米向けディーゼルエンジンの認証不正に伴い、米国当局とカナダでの集団訴訟の和解金費用として2300億円の特別損失を計上したことで、大幅赤字に転落した。 これにより、従来は未定だった24年度(24年4月~25年3月)の通期の最終損益も2200億円の赤字になる見通しだと発表した。同社において過去最大の赤字額であり、年間配当も無配とした。 決算発表会見で、中野靖CFO(最高財務責任者)は「特別損失は現時点で見積もり可能と判断した範囲で計上したが、膨らむ可能性もある」と、米国当局との交渉次第で損失が悪化する可能性について言及。オーストラリアでも同様の訴訟が起きており、今後さらに業績が悪化するリスクが潜む。 さらに、日野自の9月末時点の自己資本比率は12.9%と、3月末から13.9ポイントも減少。急速に自己資本比率が悪化しており、同社は今後の資金繰りの対策も検討しているという。 これまで国内トラック市場でトップシェアに君臨し、日本の商用車メーカーの代表格だった日野自が厳しい経営状況に追い込まれている。その中で、親会社のトヨタ自動車は、改めて「日野自をどうするのか」という、トヨタ商用車部門の今後の位置付けに関わる大きな経営判断を迫られている。
そもそも、日野自の業績悪化の要因は、22年に発覚したエンジン認証不正にほかならない。型式認証を取得する際に実施する排出ガスや燃費データを改ざんしていたため、国内だけでなく世界各地で不正のあったエンジンを搭載した車両の出荷を停止する事態に発展した。さらに、米国やカナダなどで顧客の物流会社などの集団訴訟を受けているほか、各国当局による調査も続いている。 日野自の純利益は、20年度が▲75億円、21年度が▲847億円、22年度が▲1177億円と3期連続の赤字だったが、23年度にようやく171億円の黒字転換を果たし、息を吹き返しかけた。しかし、先述の通り、再び過去最大の赤字に転落する見通しだ。 24年度の業績見通しの中身を見てみると、アジア市場の販売は厳しいものの、国内の販売台数が回復し営業利益は300億円となる見込みだ。すなわち、本来のビジネス自体は回復しているものの、米国とカナダの和解金が業績を直撃した形となっている。 また、6日に発表された親会社のトヨタ自動車(日野自に50.1%出資で連結子会社)の24年4~9月期連結決算では、営業利益が2兆4642億円で、前年同期比3.7%減、950億円の減益となった。この営業利益の減益要因の中には、日野自関連のマイナス2300億円が含まれていることも示された。 本業自体が回復しているのは不幸中の幸いかもしれないが、海外の特別損失がまだ膨らむ可能性もあり、先行きが極めて不透明なことが大きな不安要素となっている。 その中で、注目されるのがトヨタの動向だ。 そもそも、すでにトヨタは日野自の自主再建は難しいと判断して、三菱ふそうとの経営統合を進める決断をしている。