開発進む月面探査車、ゴムも空気も使わない「極限環境のタイヤ」とは? アルテミス計画で活動目指す、日本企業の挑戦
一方、月面の環境を地上で再現するには限界もある。例えば月は、地上と異なり風や水による風化がなく、砂の形状はいびつでサイズもさまざま。さらに月面は地球の6分の1という低重力環境にある。タイヤに対して砂がどのように振る舞い、影響を与えるかは十分に分かっていない。 月面環境に詳しい小林泰三(こばやし・たいぞう)立命館大教授(地盤工学)は、車輪をつり上げて6分の1の荷重を再現し、月の模擬砂の上を走らせる実験に取り組んだ。地上では問題なく走行した。 だが急降下する航空機という環境を利用して、全体の場にかかる重力を月と同様の6分の1にする実験では、車輪は砂に沈み込み、走行できなくなってしまった。「月の砂の性質や、低重力の影響をいかに考慮するかが重要だ」と指摘する。 月面でタイヤが故障し、探査車が走行不能になれば、搭乗する飛行士の命に直結しかねない。ブリヂストンは、コンピューターを使った月面のシミュレーションにも取り組み、設計に反映させる方針だ。
同時に、開発する金属製タイヤを搭載した試験用の無人探査機を事前に月に送り込む機会も模索するといい。こう意気込む。「過酷な環境下での安心安全と、断トツの走行性能を提供する」