製作費2,000万円は自腹!たった1館から大バズり『侍タイムスリッパー』安田淳一監督が振り返る“崖っぷち”の映画製作
「前2作は、大阪の劇場やシネコンそのものから始める感じでしたが、 インディーズ映画の売り方として、宣伝費がないのにシネコンで上映してもお客さんは入りません。『侍タイムスリッパー』を製作した時、とある監督から、シネマ・ロサさんで話題を作ってから全国に広がっていくことが理想的なパターンであり、『カメ止め』もかつてそうだったという話を聞いたんです。そしたら、シネマ・ロサさんから、今年のインディーズフィルムショーのイチオシ作品にして、大ヒットさせてほしいとすぐリアクションがあったんです」
シネマ・ロサで上映すると、リピーター客が続出。中には、17回も鑑賞した人もいたという。「公開初日から満席で、その日のうちで40件近く(Xに)ポストしてくださって、上映後にお見送りをすると、見た顔がどんどん増えてくんです。シネマ・ロサには、インディーズ映画を自分たちで盛り上げていこう、応援しようというありがたいお客さんがたくさんいます。シネマ・ロサから始めたことは本当に大正解で、他の映画館だったら絶対こうはなってないと思います」
「シネマ・ロサの190席を埋めることは、大手シネコンに対してもアピールするそうです」と続けた安田監督。「いい作品ができたら、 シネマ・ロサで上映してもらってという流れは、『カメ止め』『ベイビーわるきゅーれ』『メランコリック』とありました。シネマ・ロサが(インディーズ映画の)登竜門になることは、これからもっと明確化していく気がします」
『蒲田行進曲』“階段落ち”に匹敵するクライマックス
そもそも、『侍タイムスリッパー』の物語はどのように誕生したのか? 安田監督によると、きっかけは京都のヒストリカ映画祭のコンペティションだったという。「京都映画企画市(時代劇・歴史劇ジャンルの映画企画コンテスト)に応募してみないかという話になったんです。その時に何か(いいアイデアが)ないかなと考えた時、とある有名俳優が現代にタイムスリップしてきた侍を演じている面白いコマーシャルがあって、さらに『ごはん』の頃から親交があった“斬られ役”で知られる福本清三さんと結びついたんです。これは面白いかもしれない! と思って、基本的なプロットを30分ぐらいでさっと書き上げました」 「侍+タイムスリップ」という組み合わせだけでは、ただのドタバタコメディーで終わってしまうと危惧した安田監督。そこで頭に浮かんだ作品が、同じ撮影所を舞台にした深作欣二監督による名作『蒲田行進曲』(1982)だった。