新型シボレー コルベット Z06にアメリカの本気を見た!!! フェラーリやランボルギーニにも劣らない2500万円のモンスターマシンに迫る
シボレーの現行「コルベット」に追加された高性能バージョン「Z06」に、渡辺敏史が試乗した。ノーマルモデルとの違いとは? 【写真を見る】新型コルベット Z06の詳細(51枚)標準モデルとは異なる内外装がスゴい!!!
DOHC化
世の中的にはあんまりそんなイメージはないのかもしれないが、21世紀のコルベットにとって切っても切れない関係といえば、ロックスターではなくレーストラックだったりする。ル・マン24時間レースやWEC(FIA 世界耐久選手権)での活躍の背景には少なからずマーケティング的な要素もあっただろう。結果、それまでアメリカ国内向きのイメージの強かったコルベットが、一時、欧州市場で年間1万台も販売されるモデルに成長した。 ちなみに21世紀以降、コルベットのル・マン24時間レース勝利数(GTEカテゴリー)は8回であるものの、2015年を最後に勝利からは遠ざかっていた。ライバルの高性能化に対峙するには、伝統のFR(後輪駆動)レイアウトでは限界がある。そう悟れるほどにFRをやり尽くしたことが、コルベットのリヤミッドシップ=MR化への大転換の端緒となったのは、GMのエンジニアもはっきりと認めるところだ。 そうまでしてル・マン24時間レースで勝ちたかったのか……と、そんな彼らの執念の権化ともいえるのが「Z06」である。ネーミングのルーツは遡ること約60年前、2代目コルベットに用意されたパフォーマンスパッケージのオプションコードだ。それが5代目以降はハイパフォーマンスグレードに与えられる名称となった。 6代目のZ06は自然吸気の7.0リッター、7代目は6.2リッター+スーパーチャージャーと動力性能を追求する術は異なるが、エンジン型式そのものはアメリカ車のソウルともいえるOHVを採用した。しかし、8代目が採用したのは驚くことにDOHCだ。自然吸気の5.5リッターV8は、ファクトリーレーサーの「C8.R」、そしてカスタマー向けレーシングモデルとして販売される「C8.GT3.R」と基本設計を共有。後者は、70%以上のエンジンパーツをZ06と共有するという。 クランク形状は基準車のクロスプレーンとは異なり、フェラーリとおなじフラットプレーンを採用。高回転・高出力化に有利な一方で、快適性の面では不利とされる。前述の通り、“勝つためのエンジン”であるゆえ、とにかくハイパフォーマンスであることを前提に設計されたのだ。ボアストローク比は今どきあり得ないほどのショートストローク型で、圧縮比も12.5と強烈な設定だ。形式は異なれど素性的に極めて近い量産エンジンとして唯一挙げられるのがポルシェ「911GT3」のMA275型かもしれない。本気を出したアメリカのエンジニアリングはシャレにならないほど高精度・高密度であるのだ。 ただし、Z06とベースモデルの識別点は思いのほか少ない。とりわけ試乗車の外装は真っ黒で、クーリングチャンネルを増やした前後バンパー形状や幅広のフェンダー、リヤサイドのエアインテークなどが目立ちづらい。ちなみに本国仕様はエキゾーストが専用設計のセンター4本出しとなり、高負荷・高回転域では半分がストレート抜きになるが、騒音規制に引っかかる日欧仕様では、基準車に準拠した形状のエキゾーストだ(馬力は約20psパワーダウン)。