新型シボレー コルベット Z06にアメリカの本気を見た!!! フェラーリやランボルギーニにも劣らない2500万円のモンスターマシンに迫る
素晴らしいエンジン
内装の差異については唖然とするほど素っ気ないが、Z06の別物ぶりはエンジンを掛ければ即座に伝わるはずだ。助平心でちょっとブリッピングをかましてみれば、異様なピックアップがレーシングの血統を余すことなく見せつけてくる。自然吸気でリッター当たり約120psも発揮するだけに、やはりエンジンの放つオーラは半端なものではない。回転の上昇と共に伝わってくるのは、ムービングパーツが無駄なくズレなく仕事をしている様子だ。クルマ好きにとってはなんとも艶めかしい微振動である。それに伴うサウンドもフェラーリのように甲高い高音が際立つものではなく、ちょっと野太くていかにもメカメカしい。 エンジンは、低回転域からのトルクリッチなアメリカ車のイメージとは異なり、回転上昇と共にぐんぐんパワーを紡いでいくようなフィーリングだ。低中回転域でもトルク不足を感じることはないが、さりとて有り余るほどでもなく、ATモードでも1500rpm以下のところを積極的に使いたがるようなフシはない。100km/h巡航では8速のトップギヤを使い切れないほどだ。その域で走り続けると水温や油温や70度台とかなり低めを指しているが、高負荷域では一気に適正温度へと上がるその推移をみれば、冷却能力に気遣っているかが伝わってくる。 コーナリングのタッチもゴリッとマッシブな手応えだ。ベースモデルより80mm近く広い、2.0m超の車幅に収められるタイヤは、前輪がポルシェ911カレラの後輪にほど近く、後輪に至っては345幅と極太だ。さすがにここまでグリップ力が強力だと、日本のワインディングを気持ちよく……程度のペース(50~60km/h)では前輪の力でグイグイと曲がっていく感が強くあらわれる。そもそもロードゴーイングレーサー的な位置づけであるこのクルマにとって、パフォーマンスを全開放する場所はサーキットになるのだろう。 だからといって公道ではまるで満足感が得られないかといえば、そんなことはない。今、大排気量の自然吸気エンジンを自分のものとして日々扱えるという贅沢はクルマ好きにとっては格別なものだ。エンジンだけの価値を切り取ってみたとしても、それはポルシェやフェラーリ、ランボルギーニなど錚々たるメーカーのエンジンたちと比肩する魅力を持つ。 今もって伝統的なOHVを軸足にしながら、一方でこういった選択肢を得られた背景に、コルベットのスポーツカーとしての歴史と共に、米国の本気のエンジニアリングの深淵を垣間見る。
文・渡辺敏史 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)