江原啓之×丸山敬太 卒業後は別々の道へ。「26歳の頃は、神主と個人カウンセリングを」「ドリカムの衣装を26歳で手掛けた」
◆これからをどう創造的に生きるか 丸山 長年デザイナーの仕事を続けていて、今さらだけど理想とする自分には一生たどり着けないって実感するんだよね。コレという具体的な理想形があるわけではないけれど、一つ目標をクリアしたら、その先に別の目標が見えてきて、それに向かっていく。終わりがないんだ。 江原 デザイナーになりたいという夢を叶えた時は、どう思ったの? 丸山 ラッキー! というのが正直なところ。逆に、続けるほうが大変だった。時代に応援されて世の中に出ても、どんどん時代は移ろうからね。その時々で全力投球し、経験を積み重ねてきたという感覚。ただ、どんな時も自分を信じていたかな。そうじゃなかったら、ここまでこられなかった気がする。 江原 なるほどね。僕もいろいろあったけれど、年を重ねるのもいいなと、最近思うよ。昔は尖っていたけれど、丸くなって気持ちにゆとりができたというか――。 丸山 それ、わかる。同感。若い頃は根拠のない自信みたいなのがあって、でもその裏にはコンプレックスも隠れていた。そんなアンバランスな感じを人に見せたくなくて、バリアを張っていたんだと思う。そう考えると経験ってすごいよね。 続けることで自信が生まれて、自分のままでいいと開き直ることができるようになった。気持ちのうえではずいぶん楽になったよね。
江原 敬太はファッションデザイナーだけど、僕はライフデザインをしてきたと思っていて、クリエイティブに生きてきたという意味では共通しているね。だから気が合うのかなって、今日、改めて思った。 丸山 そうだね。でもお互いに、還暦になったこれからをどう創造的に生きるかが問題じゃない? 江原 ホントだよね。 丸山 僕は、いい時代にファッションの世界に入り、パイオニアたちに引き上げてもらってきたという思いがずっとあったんだよね。でも、その恩恵を僕は誰にも返してない。だから今後は、下の世代に自分の経験や熱量みたいなものを伝えていけたらいいなと思っているんだ。 江原 敬太は今年、デビューから30周年? よくやってきたよね。 丸山 振り返れば大変なこともたくさんあったけど、あっという間だった。デザイナーに定年はないし、その意味で30周年だろうが、還暦だろうが、何も変わらないと思う。それはプーヤンも一緒じゃない? 江原 確かに60歳といっても通過地点でしかない。僕は今年、スピリチュアリストとして活動を始めて35年にあたるんだけど、これからも淡々と人生哲学を説いていこうと決めている。忙しい季節は卒業して、静の中で深めるみたいな感覚かな。 丸山 僕は30周年記念に、新しいことにチャレンジしているよ。9月には「ケイタマルヤマ遊覧会」と銘打ち、30年間のモノ作りのすべてを公開。おかげさまで大盛況でした。ほかにも、さまざまなブランドとのコラボレーション企画をしたり、とにかくめまぐるしい。プーヤンは? 江原 僕はもう一つの顔であるオペラ歌手として、12月にサントリーホールでコンサートをするのも楽しみ。そうだ! 話していて思い出したけど、敬太、高校時代に僕と交わした約束を忘れているでしょう? 「プーヤンでも着られる大きいサイズの服を作ってあげるから」って言っていたんだよ。あの時、すごく感動したのに、果たされてないんだけど。 丸山 あれ? そうだっけ?じゃオペラの衣装でも作りますか。還暦記念で真っ赤なガウンとか。 江原 ホント? 敬太先生、よろしくお願いいたします。これを機に、縁がますます濃くなりそうだね。 丸山 腐れ縁じゃないの? なんでもいいか、楽しければ。 (構成=丸山あかね、撮影=天日恵美子)
江原啓之,丸山敬太