キャンプ直前に鳴った電話→察した放出「断れないかと」 中日主砲が抗えなかった“通告”
ユニホームのズボンを長くした先駆け…「パジャマ」と野次られたことも
要件は「明日、球団に来てください」。その時点でトレードを覚悟したそうだが、翌日、正式にロッテ移籍を通達され、ショックは大きかった。中日からは宇野氏と長嶋清幸外野手、ロッテからは今野隆裕投手と横田真之外野手の2対2の交換トレードだった。「断れないだろうかと思った。球団にもそれを聞いた覚えがある。でもやっぱり駄目だったんだよね。断ったら出場停止になっちゃうから……」。受け入れるしかなかった。 当時は高木監督が“落合派分断”のために選手を動かしたと言われたが、宇野氏は関連してこんなことを話した。「俺が一番最初にユニホームのズボンを長くしたんだけど神宮の室内で守道さんに言われたんだよ。『見てみろ、落合もちゃんと(ズボンの下を)上げてやっているやないか!』って。でも、その時には落合さんも長くしたズボンを注文していたんだよ。で、次の日から落合さんのズボンも長くなった。バツが悪かったよ。守道さんは俺がけしかけたと思ったんじゃないかな」。 それ以来、高木監督はズボンについて宇野氏に何も言わなくなったという。「俺がズボンを長くした時、最初は相手チームから『なんや宇野、パジャマ着ているんじゃねーよ』って野次られた。次の年からは(他球団でも)長くする選手が増えたけどね。長い方が楽なんだよ。落合さんも同じ考え方だったけど、守道さんはそれが好きじゃなかったんだよねぇ」。ズボン問題がトレードのきっかけになったかどうかはともかく、宇野氏には何か感じるものがあったようだ。 もちろん、決まったものはしかたがない。いつまでもトレードをショック、ショックと落ち込んでもいられない。宇野氏は気持ちを切り替えて新天地・ロッテに向かうことにしたという。しかし……。「もう1回出直してやろうかという気にはなったんだけどねぇ」。そこには試練の日々が待っていた。
山口真司 / Shinji Yamaguchi