「あなたの飲酒が他人の健康を蝕む」アルコールの“意外な悪影響”が明らかに
研究が実施された背景とは?
編集部: 今回の研究が実施された背景について教えてください。 中路先生: 研究グループは、論文の中で「世界的なアルコールによる害がどれくらいあるかを知るための定量化は、飲酒者本人に対するアルコールの影響に関するもので、飲酒者以外の人々に対するアルコールの害の寄与はほとんど見落とされてきた」と指摘しています。 そのため、世界や各国の政策課題を形成する上で重要な役割を果たす計算において「アルコールの健康への総影響は、世界的にも国内的にも過小評価されている」とも述べています。 研究グループは、アルコールが他者に及ぼす害のうち、妊娠中の飲酒、暴力、交通事故が定量化可能としています。また、研究が実施されたニュージーランドでは、先住民のマオリ族と、そうでない人でアルコールによる害のリスクが異なっていることも指摘されています。 例えば、マオリ族は他人の飲酒による暴力を経験する確率が35%高く、マオリ族の子どもは非マオリ族の子どもよりもアルコール事故で死亡、または重傷を負う可能性が高いというデータもあります。 加えて、マオリ族の女性は、他民族と比べて妊娠中の飲酒の有病率が著しく高く、FASDの発症率が高いと推定されています。こうした背景から、研究グループは今回の研究を実施しました。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: ニュージーランドのマッセイ大学らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。 中路先生: 飲酒は多くの国で「生活習慣の一部」となっており、国際条約で禁止されているいわゆる「違法薬物」とは異なる分類に属します。そのため、一律に禁止することは困難でしょう。 たしかに、他人の飲酒による被害の程度と範囲が大きいことを見逃すことはできませんが、どのような対象(年齢・性別・人種など)がその傾向にあるかを見極め、どう対策(制限)を講じるかが重要だと思われます。 また、国々により生活習慣は異なるため、今後同様な研究がグローバルにおこなわれることを期待します。