国立教育政策研究所が教育データ利活用の推進に向け、国の施策と事例を紹介
国がGIGAスクール構想を推進する理由の一つに「教育データの利活用」がある。世間での注目度が高いとは言えないが、政府は重要政策として位置付けている。2024年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、「教育データの効果的な利活用の推進とそれに必要な環境整備」という項目を設け、データ連係(連携)基盤の検討や自治体への支援を進めるよう指示している。ただ、この重点計画の中で「教育におけるシステム間・自治体間のデータ連携に課題がある等の理由で教育データ利活用が全国的な動きになっていない」と指摘されているように、実際の利活用はまだ限定的だ。 【図版】関連資料を見る そんな状況の中、国立教育政策研究所(国研)は2024年11月9日、「AI時代の教育データ利活用による学びの可能性~研究と実践~」と題したシンポジウムを開いた。国研は2021年に教育データサイエンスセンターを設立し、2023年には「公教育データ・プラットフォーム」を公開した。 シンポジウムの前半では国の施策について文部科学省、学術研究の動向について京都大学 学術情報メディアセンター 教授の緒方広明氏がそれぞれ講演した。緒方氏は教育データ利活用の現状を分析し、課題として「データを2次利用するためのルールづくり」「データの標準化」「データの囲い込み」「データの収集と利活用に必要な情報基盤システムの整備」などを挙げた。 データ利用のルールづくりについて緒方氏は、「教育データの利活用は技術的に難しいことではないし、実際にできている。一方で、個人情報を適切に保護しながらデータの共有と連係を進めるための制度設計はできていない」と指摘。統一されたデータ形式を導入し、データの一貫した活用ができる体制を整えることと、ベンダーがデータを囲い込まず提供することが重要だとした。その上で、「教育データの収集や分析の情報基盤整備は地域ごとにバラバラに進める話ではなく、国全体としてどのように進めるかを考える必要がある。国は最低限必要な情報基盤システムを用意すべきだ」と訴えた。