「助けてください」記者に届いたSOS ボロボロの歯、赤い靴を履いた青年はどこに消えたのか
●残り2200円で寝場所を確保
博多に流れ着いた経緯を話し終わると、彼は「まずは住むところを見つけたい」と言った。 運良く、生活困窮者を支援する福岡市東区の「抱樸館(ほうぼくかん)福岡」に空きが見つかり、早速12月28日朝に施設を訪ねた。 申込書に性別や生年月日、相談したい内容などを記入し、健康状態や借金の有無などの質問に答えていく。施設のルールについて説明を受け、契約書2枚に名前と日付を記入して手続きは終了。施設責任者の許可が下り、入所が決まった。 割り当てられたのは3階にある6畳ほどの個室。彼は支給された下着やタオルを棚に丁寧に並べていく。 「思ってたより広い。やっとゆっくり寝れそうです。寝るところとご飯があるので大丈夫。あとは(施設に)入っている人と打ち解けられるかです」 この時、財布に残っていたのは1000円札2枚と100円玉2枚の計2200円だけだった。
●深まる疑念
「年末から戻ってこない」 年が明けた2020年1月3日、施設から連絡があった。ルイトが入所3日後に外出したまま帰宅しないという。 危機的状況で見つけた居場所をなぜ手放すのか。不思議に思いながら彼にラインで安否を尋ねると、退去したはずのアパートがある福岡県福津市に戻ったと返信がきた。 彼はそれまで、苦労が多かった幼少期の出来事や具体的な住所をよどみなく語っていた。しかし、この後は一転して彼の話に疑念がつきまとうようになる。 福津市で彼と落ち合い、以前住んでいたというアパートを訪ねると、確かに存在した。 だが、事前に聞いていた104号の部屋を訪ねると、ルイトの名字とは違う名前の表札が掛かっていた。 彼の方を見ると、「俺が出てから新しい人が入ったらしいです」と真顔で答える。 念のため隣の103号室のチャイムを押す。出てきた高齢男性は「104号室には家族が長年住んでいる」と話した。少なくともここ数日で引っ越してきたという事実はなかった。 事実とうそを混ぜ合わせ、自分の都合に合ったストーリーを作り出しているのではないか。疑念が確信に変わるまでにはさらに3週間がかかった。