大人になった息子と母親の適切な距離感とは?
ポストMeToo時代の母親像
MeTooをきっかけに、社会は大人になった少年たちに変化を促すようになった。とりわけ女性との関係において変革が求められる現代社会において、彼らは母親からどのようなメッセージを受け取るだろうか? こうした動きは、母親と息子の関係にも変化をもたらしているのだろうか? この関係の変化には、まだ探求すべき難しい領域が存在する。 ヴァレリアンは40歳になって、そして残酷で辛い別れを経て、初めて母親と恋愛について語った。彼の母親は、自身の結婚生活にダメージを与えた不倫について彼に打ち明けた。ある意味、初めての経験だった。「いままで、そんな話をするほど母と親しくはなかった。そして、私は母から私を心配する権利を奪った」とヴァレリアンは振り返る。音楽家レオ・フェレが「時の流れに」で歌ったように、母親が「あまり遅くならないで、風邪をひかないで」と声掛けする時期が終わった後、母と息子の間に何が残るのだろうか? ファッションビジネスを経営するヴィクトワールは、25歳と26歳の息子たちに、「幸せでない」と感じたらいつでも夫と別れ、経済的に独立し、キャリアを築き、そして良い母親であり続けることができることを示してきた。しかし、特定のトピックについては、息子たちが母親のもとに来るのを待つことにしている。というのも、話をすることが逆効果になるのではないかと心配しているからだ。 「MeTooは彼らに非常に強い影響を与えました。彼らはいろいろなものを読み、追いかけ、ある時私にその話題を切り出しました」とヴィクトワールは語る。社会的な出来事は母親の言葉よりも強い影響を持つ。しかしそれでも、少し時間を置いてから、母親と語り合うことは意味があると考えている。 「母はまるでひとりの女性のように語ってくれた」とヴィクトワールの息子のひとり、クレマンは説明する。「母は私に必ずしも不愉快で非道ではない浮気や誘惑の形も存在し得る、と言ったんです。怖がることはないと。彼女の価値観を誰よりも知っているぼくは、その言葉を聞いて少しホッとしました」 母親と息子の適切な距離とは? どんなふうに付き合えば良いのか? 母親と成人した息子の関係においては、生活の変化に伴う波や感情のムラを受け入れることが重要だ。たとえばニコラは50歳で子どもを授かってから、母親と距離を置くようになった。以前は母親と毎日話していたが、子どもを持つようになると「母から押し付けがましい助言があり、距離をとるようになった」と話す。 ニコラは母親に「あなたがとやかく言うことではない。自分たち夫婦のやり方でやる」と伝えた。同時に、「権威の源としての母親が衰退していくのを目の当たりにしたのです。このことを考えると、とても悲しくなるし、母を抱きしめたくなる。しかし、母にスペースを与えすぎると、彼女はそれを奪い、私たちを困らせて、イライラさせるんです」 当然、母と息子の関係に魔法の公式など存在しないが、母親と息子の関係は、遠すぎず、近すぎず......。バランスを取ることが重要だ。ラッキーなことに、両者には良いリソースがある。芸術、演劇、文学の中にそのヒントを見つけることができる。
text: Lisa Vignoli translation: Hanae Yamaguchi