SB工藤監督がムーアの7回ノーノー交代に公開謝罪…13年前の落合中日に比べて采配に賛否が起きない理由とは?
2007年に中日と日ハムで争われた日本シリーズの第5戦。3勝1敗で王手をかけていた中日は、先発の山井が8回まで完全試合を続行していた。球数は、まだ86球だったが、落合監督は交代を決断。9回を守護神、岩瀬に任せて、日本シリーズ史上初の完全試合リレーを達成して、日本一を手にしたが、試合後、その非情の落合采配への批判の声が多く寄せられ賛否が白熱した。山井の指のマメが潰れていたことや、1-0の点差、中日にとって53年ぶりの日本一であり、逆転負けでもして舞台が札幌に移れば、流れが変わる危険性があったことなど、後々になって交代理由が表に出てきたが、あの名将、野村克也氏でさえ、疑問を呈するほど、賛否の議論が続いた。 当時と違い、SNSで活発な議論が交わされる時代となり、さらに賛否が起きやすい環境にあるのだが、ムーアの交代に対してファンの間での議論にまったく火がつかなかった。 なぜなのか。 ソフトバンクの野球に詳しいOBの評論家、池田親興氏は、こんな分析をしている。 「今日のムーアの交代は理解できます。レギュラーシーズンならば、1本打たれるまで投げさせていたのでしょうが、小さなミスで流れが変わるのが短期決戦であり、交代をムーア本人に伝えた段階では2点差でした。彼の今季最多投球数は119球です。8回まで行かせて球数が110球を超えていれば、なおさら決断が難しくなりリスクも増します。モイネロ、森というリーグ優勝を勝ち取った2人が控えているのですから、流れを渡さずに必勝を期すためには7回での交代が最適でした」 さらにこう続ける。 「加えて工藤監督は、直接、ベンチで本人の意思を確認していました。さらに工藤監督は場内インタビューでファンに交代理由を説明して謝罪までしました。ムーア自身もチームの勝利優先というコメントを出しています。これらの一連の動きもファンから批判が出なかった理由ではないでしょうか。13年前の山井のケースでは、そのあたりの事情がよく見えませんでしたし、ノーノーではなく完全試合。まして、あと3人というところまで来ていました。53年ぶりのチームの日本一を最優先に考えての石橋を叩く落合采配だったのでしょうが、歴史に残る大記録を奪ってしまったという印象の方が強くなってしまいました。このあたりの違いが、ファンの反応の違いにつながっているのかもしれません」 シリーズ史上初となる2年連続の“4タテ日本一”に王手をかけた。 工藤監督は「明日からも一戦必勝の強い気持ちをもって戦っていく」と宣言した。先発は松坂世代のベテラン左腕の和田。対する巨人は畠である。工藤監督の非情采配が、無傷決着への流れを作ったのかもしれない。