SB工藤監督がムーアの7回ノーノー交代に公開謝罪…13年前の落合中日に比べて采配に賛否が起きない理由とは?
ムーアは1回に最初で最後のピンチを迎えていた。先頭の吉川をショートゴロに打ち取ったが、正面のゴロを牧原が一塁へ悪送球し得点圏に進まれた。続く松原には、バントをミスさせたが、飛び出していた二塁走者の挟殺プレーに失敗。結局、一死二塁と走者を残すことになった。だが、坂本をチャンジアップで三振、岡本も154キロのストレートでショートゴロに抑えて無失点に切り抜けた。6回にも、先頭の大城のゴロを自らが取り損ねて出塁させた。一死からは松原をセンターライナー。だが、芯で捉えられていた。次打者にその前の打席であわやレフトオーバーの当たりを打たれていた坂本を迎えると甲斐がタイムを要求、マウンドにナインが集まった。 「いい当たりもされてピンチを迎えたが、タイムをとってくれて“気を引き締めて”と声をかけてくれた。気合が入った」 一発が出れば同点の場面だったが、冷静に変化球を軸に組み立てて最後はボールゾーンのナックルカーブを振らせた。 本来、ムーアは、ストレートとナックルカーブ、チェンジアップの変化球の割合が半々くらいの配分のピッチャー。しかし、この日は、ひと回り目はストレートを軸に配球した。この2試合、巨人打線が150キロを超えてくるストレートの球威に対応できていない傾向を読んだ上で、変化球を頭に入れてきた相手の裏をかいた。そして、ふた回り目からは変化球主体へスイッチ。巨人打線が戸惑うのも無理はなかった。 8回からノーノーリレーを託された2番手のモイネロの方が緊張していた。珍しく一死から死球、四球で歩かせた。だが、田中俊、重信の代打の2人を高速カーブで度肝を抜かせて連続三振。9回のマウンドに立った守護神の森は二死から変化球を丸に読まれてセンター前ヒットを許した。惜しくも13年ぶりのノーノーリレーの記録は途切れたが、工藤監督の采配は成功して3連勝。日本一へ王手である。 場内での勝利監督インタビューで工藤監督は、ノーノーを続けていたムーアの降板について聞かれ、「こんな大きな舞台でノーヒットに抑えたのは、心技体をしっかりとこのゲームに合わせて調整してくれた表れかと思うのですが…すみません。7回で代えさせていただきました」とファンに苦笑いで謝罪した。 だが、送られたのはブーイングではなく拍手だった。 ネット上も、この工藤采配への賛辞こそあれ、批判の声はほとんどなかった。 「謝罪する必要はない」「短期決戦ゆえの素晴らしい采配」「勝利の執念を監督以下全員から感じる」などなど。賛否の議論に発展することはなかった。 ただ「13年前の落合采配には賛否があったのになぜ?」という声もあった。