いまやシリア全土の半分を制圧 “完全復活”した「イスラム国」
相変わらず多い外国人戦闘員
「イスラム国」はイラク政府軍やシリア政府軍、反政府軍の拠点を攻略しながら、敵の武器を鹵獲(ろかく)して戦力を強化している。とくにイラク政府軍から入手した武器は膨大なもので、さらに数年程度は戦闘を続行できるストックがあるとの見方もある。 ただ、有志連合の空爆や、自爆攻撃をはじめ決死隊的な作戦を厭わない「イスラム国」の部隊では、戦闘員の戦死が多い。米当局は「空爆開始以降で1万人以上」とか、「毎月1000人以上の戦闘員を殺害」と発表している。現地でのカウントが難しいこれらの数字はおそらく誇張されたものだが、それでもかなりの数の「イスラム国」戦闘員が戦士したのは確実であろう。 しかし、それでも「イスラム国」の戦闘員は、まだまだ健在である。一つには、占領地域で広く戦闘員を徴募しているということがある。「イスラム国」占領地域では、「イスラム国」への参加を拒否することは死に直結する危険行為であり、断ることは難しい。また、困窮したシリア難民の若者が、「メシを食うため」に「イスラム国」に参加するケースも少なくない。 また、中東アラブ圏や欧州のイスラム移民社会からの志願兵も、あいかわらず後を絶たない。これは一種のブームのようになっており、「イスラム国」の戦闘員は、今後もしばらく補充され続けることになるだろう。現在も「イスラム国」は3万~5万人の兵力を維持しているものとみられ、そのおよそ6割が外国人とみられる。
兵力をまだまだ維持できる資金
「イスラム国」の資金は、昨年後半のような最盛期に比べればかなり落ちた。新たに占領した町村での略奪や、石油密売収益などが、いまやかなり小規模になっているからだ。 しかし、「イスラム国」の占領エリアには1000万人とも1200万人ともいわれる住民が居住しており、「イスラム国」は彼らから「税」という名目で金品を強制徴収している。「イスラム国」占領エリアでの経済活動は著しく低下しているが、それでもこれだけの住民が生活していれば、そこから吸い上げる資金で兵力を維持することは可能だ。 確かに「イスラム国」の消耗は大きいが、それでも戦闘員、武器、資金が枯渇しないかぎり、「イスラム国」にはまだまだ戦う力がある。 (軍事ジャーナリスト・黒井文太郎)
■黒井文太郎(くろい・ぶんたろう) 1963年生まれ。月刊『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長等を経て軍事ジャーナリスト。著書・編書に『イスラム国の正体』(KKベストセラーズ)『イスラムのテロリスト』『日本の情報機関』『北朝鮮に備える軍事学』(いずれも講談社)『アルカイダの全貌』(三修社)『ビンラディン抹殺指令』(洋泉社)等がある