"またトラ"最大の懸念は「日本人の命」…動き読めぬトランプの"さじ加減"で日本が紛争に巻き込まれる恐怖
米大統領に返り咲くことが決まったドナルド・トランプ氏。新政権の政策で日本はどんな影響を受けるのか。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「経済面では米中摩擦により中国依存度の高い日本の製造業が失速するリスクがあり、政治面でも対中政策の方針によっては東アジアの紛争に日本が巻き込まれるおそれがある」という――。 【図表】2017年1月~2021年1月の株価と為替レート ■トランプ政権は日本経済に吉と出るか凶と出るか ドナルド・トランプ氏が米国の次期大統領に選出され、2025年1月20日に就任することとなりました。選出直後では、2度目のトランプ政権の経済政策に期待して、NYダウが1500ドルを超える大幅高となりました。 減税の継続などの景気刺激策や財政の拡大予想から、現状2%台前半のインフレ率が再び高まるという懸念からドル金利が上昇し、それにともないドル・円レートも3円ほど円安に振れ、154円台に上昇しました。この原稿を書いている時点では152円台です。 トランプ氏の選出直後に市場は好感して反応したわけですが、トランプ再登板で日本経済には懸念もあります。 ひとつは、中国との関係です。選挙期間中に中国製品に60%の関税をかけるとトランプは発言していました。大統領就任直後にすぐに関税引き上げを行うかどうかは不明で、トランプ氏特有のブラフの可能性もありますが、中国政府や中国製品に対する風当たりがバイデン政権時よりも強くなることは明らかです。中国経済への依存度が大きい日本は心配です。 トランプ氏が前回大統領だった時期の経済情勢が大いに参考になると考え、今回の原稿ではそれらを振り返りながら、次期政権での経済運営や日本への影響を考察してみます。
■前回大統領時の日米株価を振り返ると… トランプが前回の大統領だった2017年1月から2021年1月までを振り返ってみましょう。 まず株価と為替レートです。 2017年1月に就任したトランプ大統領ですが、その時のNYダウ平均株価は、図表1にあるように1万9864ドルでした。ちなみに大統領選挙が行わる直前、オバマ政権末期の2016年10月のダウ平均は1万8142ドルでしたから、新政権への期待もあり、そこから少し持ち上がった株価のレベルで政権をスタートさせました。 その後、トランプが政権を担い、減税や景気刺激策をとったこともあり、NYダウは比較的順調に上昇し、米国でコロナの蔓延が本格的にはじまる直前の2020年1月には2万8859ドルまで上昇しました。就任3年間で1万ドル近く上がったことになります。 ただ、当時のトランプ大統領はコロナを軽視していました。コロナの影響が深刻になりはじめた2020年3月には、一時的に2万2000ドル台まで急落。バイデン大統領に大統領選で敗れ、退任した2021年1月には、2万9983ドルまで再び上昇しました。 こうして見ると、トランプが前回に政権を取った時期は、NYダウは後半にはコロナの影響を一時受けたものの、比較的堅調に上昇したと言えます。 その背後には、図表1にある短期金利の代表格であるTB(財務省証券;国債)3カ月物の金利の推移を見ると分かるように、中央銀行であるFRBが、丁寧に金利の調整を行っているのが分かります。景気が過熱しそうだと金利を高めに誘導し、景気が下落しそうだと金利を下げたのです。とくに、コロナ蔓延以降は、短期金利を一気にゼロ近辺まで下げました。 一方、日本の株価(日経平均)も前回のトランプ政権の時期には、比較的順調に推移しています。同じ時期を見ると、2017年1月には日経平均株価が1万9000円台だったのが、NYダウとある程度歩調を合わせるように上昇しました。2019年には日経平均は下落しましたが(後述)、その後、2020年はコロナが蔓延しはじめ、経済に深刻なダメージを与え、一時1万8000円台まで下落しましたが、米国同様、その後は比較的順調に推移し、2021年1月には、2万8000円台をつけました。 しかし、日銀は米国の中央銀行のように小刻みかつ丁寧に金利を動かすことはできず、ゼロ近辺で金利は止まったままで、日本の株価はNYダウともある程度の相関を持ちながら、日本の金融政策とは関係のないところで動いていたとも言えます。