建築家が設計したアートを飾るための家。カラフルなのになぜかまとまって見える理由は…
現代アーティストの住まいとして、背景となる白い箱ではなくあえて色を多用した「T/K邸」。 カラフルで軽やかな色使いによって建築や家具、アートがあいまいに混ざり合い、刻一刻と変化する色をまとった光がインスピレーションを与えてくれる住まいです。 【写真集】建築家・園田慎二さん設計のアートと建築が調和する住まい
住まいというキャンバスを、常に変化するアートのように
光が差すと、オレンジ色の光の帯が壁面にぱっと現れます。開口には色ガラスやパンチングメタルが用いられ、建具は緑や黄色、多様なアートが飾られるなど、色彩豊かで楽しい空間です。 ここは、現代アーティストとして活躍するKさん、Tさん夫妻が家族や両親と暮らす二世帯住宅です。平屋部分が親世帯、西側の2階建てが子世帯で、南側の庭でゆるやかにつながっています。 設計を依頼されたのは、高崎のギャラリーを改修した縁で夫妻と知り合ったという建築家の園田慎二さん。 「アート作品を飾るため白い箱に仕上げる方法もありますが、ここではむしろ多様な色や素材を入れることで家具や建具、アート、モノがあいまいに混ざり合い、色彩が軽やかに漂うような空間をイメージしました」 壁に飾るアートについては、あえて事前には聞かなかったそうです。「最初の段階で計画的につくり込むより、暮らしのなかで足したり引いたり、アクティブに変化を楽しんでほしいと思ったんです」と語ります。
幾何学的な形の繰り返しが、多彩な色とアートをつなぐ
壁と天井は白の漆喰仕上げ、素材は部屋ごとに変化をつけています。吹き抜けのリビングはハイサイドライトにオレンジの色ガラスとパンチングメタルの立体的なフレームをはめ込み、一方のダイニングは天井高を抑え、青の色ガラスを用いてキャビネットを造作。天井の高低差や勾配による明暗、色ガラスも相まって、ゆらぎのある光が生まれています。
グレイッシュなトーンを基調にした、絶妙な色の組み合わせ
色選びには、住み手夫妻のアーティストならではの感性が光ります。 「壁に飾るアートは抽象から具象、写真や油絵、彫刻など多岐にわたるので、作品と色がかぶりそうにない中間色を選びました。色選びは醍醐味です」とTさん。 窓の外に庭の緑が見える場合はあえて離れた色のピンクを選んだり、あるいは呼応させることも。 塗装はカラーワークスのパレットから選び、リビングの壁は一面だけ淡いグレーに塗って床の間のような特別な壁に仕上げています。