柔道・野村忠宏の引退会見全文3「康介と対面した時は」
野村が持つ柔道の理想とは?
毎日放送:まず、野村選手が柔道界からいなくなるということで、すごく魅力的な柔道家が1人いなくなる。そんな気がするんですが、野村選手が今までこだわってこられた柔道と、そして今、さらに日本の柔道の求めていくべきこと、世界の柔道もそうなのかもしれないですけど、そういうところをどう伝えていって、どういうことを理想に掲げられていらっしゃるかというのが、未来に期待しておありですか。 野村:そうですね、どうなんでしょう。自分は今は指導者でもないし、現場を知らないし、簡単には、軽く発言できる立場ではないのでなかなか難しいんですけども、やっぱりルールが変わっても柔道の本質っていうのは変わらないと思うし、柔道に向き合う姿勢っていうのも変わらないと思うし。日本の強さっていうのは、もちろんルールに合わせた変化っていうのも必要だけど、やっぱり日本の強さっていうのは技だと思ってるんで、その技っていうものは伝えていきたいと思ってますし。 根性論っていうのははやらないけど、実力がない人が、力がない人が根性だけで実力者に勝つ、これはあり得ないんですね。ただ、オリンピックとか世界選手権っていう実力者がそろう中で、本当に指導1つ、ポイント1つぎりぎりで競う、本当のぎりぎりの勝負。その勝負を分けるのは最後はもうね、気合いとか根性だと思うんです。それは根性論っていうものではなくて、精神的な強さですね。そのぎりぎりの勝負を制することができる心の強さ、勝負への思い、最後の執念。そういうのを持った選手っていうのを育てたいです。 毎日放送:もう1つ。何回か実はお聞きしてきたんですけども、よく天才ですかっていうことをお聞きしてきました。あらためて37年という年月を振り返られて、ご自分の努力もしてこられたと思います。その中で天才ですかってあらためて聞かれたらどう答えますか。 野村:(笑)。うーん、どうでしょうね。結果が伴ってるときは胸張って天才ですって言ってましたけどね。長い競技者としての自分の人生を振り返ったときには、弱かった時代のほうが長かったし、勝てない時代のほうが長かったし、もしかしたら才能っていうものはあったかもしれないけども、その才能を開花させるまでの長い時間、諦めなかった、自分を信じる力が、その自分の思いを信じる力やったな。で、その思いっていうのはほんまだと思うし、そういう思いを持ち続けられた自分っていう、自分がいたからこそ、今があると思います。