与野党間で経済対策に向けた政策協議が本格的に始まる:なお大きな溝が残る
自民党、公明党、国民民主党の3党の政調会長は12日午後に、電気・ガス料金の引き下げなど、新たな経済対策に向けた政策協議を始めた。この協議では、自民党と公明党が検討中の経済対策の原案を示し、国民民主党の要望を聞いたとされる。 3党は今週中にもう一度協議を行う予定とされている。14日からは3党の税制調査会長同士による協議も行われる予定だという。国民民主党が求める「103万円の壁」対策や、ガソリン税の「トリガー条項」の凍結解除などについても、今後、協議が行われる。現時点では、協議はまだ煮詰まっていない。 国民民主党からは、追加の要望として、賃上げ支援策、環境自動車購入補助金の補強、冬のエネルギー・水道料金への支援、新たな高速道路料金体系の導入などが示された。 政府は、11月22日に経済対策を閣議決定することを目指しているが、3党の協議が長引けば、その予定も後ずれする可能性がある。また、国民民主党が求める政策を今回の経済対策には盛り込まず、後に打ち出す可能性もある。それによって、2024年度補正予算を伴う経済対策の規模は大きく振れるだろう。 政府が示した現時点での経済対策の原案には、国民民主党が掲げる「103万円の壁」対策やガソリン税の「トリガー条項」の凍結解除などは盛り込まれていない。また、公明党が実施を求める電気・ガス代補助の復活も含まれなかった。年内で終了予定のガソリン補助金については、「出口に向けて段階的に対応する」とし、延長に含みを残した。国民民主党は、ガソリン補助金の延長よりもガソリン税の「トリガー条項」の凍結解除を求めており、それが原案に盛り込まれなかったことに反発している。原案は、協議が進んでいない政策を盛り込んでいない、かなり暫定的なものにとどまっている。 他方、原案に盛り込まれたのは、自民党が主張してきた低所得者向け給付金だ。住民税非課税世帯を対象とし、子どもの人数に応じて加算することが明記されたが、金額は示されなかった。 昨年の経済対策では、住民税非課税世帯を対象に7万円の給付が行われ、その規模は全体で1兆500億円だった。ちなみにその景気浮揚効果は、1年間のGDPを0.04%押し上げる程度と見込まれた。 また、自治体による学校給食費支援などを「重点支援地方交付金」で後押しすることが示された。 さらに、11日の記者会見で石破首相が説明した、半導体・AI分野への公的支援に複数年度で10兆円以上を投じることも原案に盛り込まれた(コラム「ラピダス支援を念頭に政府は10兆円の半導体・AI支援を決定:安易な支援がむしろ事業失敗のリスクを高め、国民負担増とならないよう慎重な対応が求められる」、2024年11月12日)。 衆院で少数与党のもとでの与野党間の政策協議はまさに手探り状態であり、想定以上に時間がかかっている印象だ。政策決定のスピードは、今までと比べて大きく低下してしまっている。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英