アウトドアサウナも! 森林浴発祥の地・赤沢自然休養林を歩き、五感で自然を体感[FRaU]
「育つのに時間がかかるということは、年輪の目が緻密できめ細かく美しい見た目になるということ。そして耐久性が高く動きの少ない良質な材となるんです」と吉川さん。過酷な環境と長い年月が木曽ヒノキを特別な存在にしているのだと実感する。
木曽ヒノキの質は、日本最高峰の神社、伊勢神宮にも認められている。1300年以上続く「式年遷宮」は、20年に一度宮処を改め社殿などを新しく造りかえる最大の神事。御神体を納める器「御樋代」の御用材に、ここ赤沢美林の木曽ヒノキが選ばれている。 式年遷宮を8年後に控えた年の6月、外宮と内宮に送られる2本のヒノキを伐り出す「御杣始祭」が執り行われる。次回の開催は2025年を予定。御神木を伐るのは、地域で選ばれた杣夫たち。吉川さんは前回の行事で、斧を振るった。
木曽ヒノキの御用材としての歴史は古く、鎌倉時代からとも江戸時代からとも言われている。江戸時代に入り築城や城下町の造営が盛んになると、乱伐され資源は枯渇していく。当時木曽地域を治めていた尾張藩は、森林保護政策を打った。 その政策は「木一本、首ひとつ。枝一本、腕ひとつ」と例えられるほど厳しいものだったという。そうして守られた赤沢の森は、その後御用材を伐り出す山「御杣山」に選ばれた。明治時代も皇室の御料林および、神宮の御用材を産出する備林として保護が続き、戦後は国有林の保安林に指定された。こうして赤沢一帯のヒノキ林は奇跡的に美しい天然林を現在に残している。
特別厳しい規制で守られてきた歴史を持つ赤沢の森。しかし現在、全国的には手入れがされない荒れた森が問題になっている。 「森の手入れが行き届かないのは、コストの問題が一番大きい。比較的安価で手に入る外国産の木材の台頭で国産材が売れない今、森から木を切り出すだけで赤字になってしまう。かといって放置しておくと、光が入らず木が大きく育たない。細く弱い木ばかりの森は土砂崩れが起こりやすくなる。適切に木を伐採し、暮らしに取り入れることが大切です」 吉川さんは森の有効活用を願っている。