安定したメンタルで驚異の5試合連続完封勝利を達成!「今を大事にする」G大阪ユースは名古屋U-18を撃破してチーム17年ぶりの大会連覇に王手!
[7.29 クラブユース選手権(U-18)準決勝 名古屋U-18 0-2 G大阪ユース 味の素フィールド西が丘] 【動画】広瀬すずさんが日本代表ユニ姿で見事なヘディング「可愛すぎる」「さすがの動き」 ここまで全試合で無失点勝利を挙げているとか、連覇まであと1勝だとか、それが注目されることはもちろんわかっているけれど、自分たちが意識すべきはそういうことではない。日常から重ねてきたやるべきことを、とにかくやり切ること。それ以外に勝利を手繰り寄せる方法はないと、若き青黒の戦士たちは十分に理解している。 「選手たちが今やるべきことをやれば、結果は付いてくると思いますね。結果はどうなろうとやってきたことをやるだけで、それ以上のことはできないですし、それを全部出し切る、やり切ることが大事だと思います」(ガンバ大阪ユース・町中大輔監督) 焦らず、騒がず、後半の2ゴールでファイナル進出!第48回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会は29日に準決勝が行われ、味の素フィールド西が丘で名古屋グランパスU-18(東海1)とガンバ大阪ユース(関西1)が対峙した一戦は、後半にFW天野悠斗(3年)とMF大倉慎平(3年)がゴールをマークしたG大阪ユースが2-0で勝利。大会連覇に王手を掛けている。 決勝への挑戦権の懸かったセミファイナル。「非常に名古屋も強かったので、なかなかウチのサッカーをやらせてくれなかったですね」とG大阪ユースを率いる町中大輔監督も言及した前半は、お互いがやや慎重な形で立ち上がる。 名古屋U-18は長いボールを使って、前線のFW大西利都(2年)の推進力を生かしつつ、FW杉浦駿吾(3年)やボランチのMF松嶋好誠(3年)が二次攻撃に加わり、狙うテンポアップ。一方のG大阪ユースはMF長田叶羽(3年)とMF山本天翔(2年)のドイスボランチがボールを動かしながら、天野やMF當野泰生(2年)は単騎で仕掛け、フィニッシュへのタイミングをじっくりと窺う。 前半16分はG大阪ユース。最終ラインから持ち上がったキャプテンのDF古河幹太(3年)がスルーパスを通し、走ったFW中積爲(2年)が狙ったシュートは飛び出した名古屋U-18のGK萩裕陽(2年)がファインセーブ。この日発表されたU-17日本代表に選出されたアタッカーと守護神が、お互いに持ち味を発揮する。 30分はG大阪ユース。中積のパスからMF森田将光(3年)が積極的に打ち切ったシュートはクロスバーの上へ。39分は名古屋U-18。杉浦が丁寧に付け、大西がミドルレンジから枠へ収めたシュートは、「失点するイメージが湧かないので、みんな良いイメージでやれているのかなと思います」と口にしたG大阪ユースのGK荒木琉偉(2年)がファインセーブで回避。最初の40分間はスコアレスで推移する。 先制劇の主役は青黒のナンバー7。後半5分。自らの強烈なシュートがクロスバーに弾かれた直後。古河からボールを引き出した天野はドリブルで前進すると、當野が粘って残したボールを再び自らさらって、そのままフィニッシュ。今度はクロスバーの下を叩いたボールが、ゴールネットへ弾み込む。鮮やかに得点を奪った天野は、これで2戦連発。G大阪ユースが先にスコアを動かす。 1点のビハインドを負った名古屋U-18は、一段階アクセルを踏み込む。7分。杉浦、FW西森悠斗(3年)と回ったボールを、大西が狙ったシュートはゴール右へ。9分には2枚代えでMF野村勇仁(2年)とFW神田龍(2年)を送り込むと、12分には自ら蹴ったCKのこぼれを拾った神田が、右サイドの深い位置へ侵入してシュート。ボールはサイドネットの外側を揺らすも、惜しいシーンを作り始める。 ただ、前回王者に焦りの色は見られない。「ディフェンスラインが身体を張れているのもありますし、中盤、前線が前から追い掛けてくれて、連動した守備でピンチを作らないというのが、無失点でここまで来ている要因なのかなと思います」(荒木)。右からDF松本健作(3年)、DF横井佑弥(1年)、古河、DF加地莉比斗(3年)で組んだ4バックも安定感は抜群。前線も選手を入れ替え、プレスの強度を担保しながら、確実に時計の針を進めていく。 40+1分のメインキャストは帰ってきた14番。途中出場のFW久永虎次郎(2年)が繋ぎ、森田が裏へパスを流すと、走った大倉は「右足で振っても良かったんですけど、遊び心で1つフェイントを入れて」左足でフィニッシュ。ボールはGKの脇下を抜けて、ゴールネットへ転がり込む。 「『今日は途中からの出場なんだから、オマエが試合を締めてこい』と言われていたので、それに応えられて良かったです」と笑った大倉は、肩の脱臼で5か月近い戦線離脱から復帰したばかり。この大会に懸けていた3年生アタッカーの追加点で勝負あり。 「何回か真ん中で持って、攻撃に転じることはできたんですけど、相手もやっぱり堅かったので、そこからの質や崩しには課題が残りましたけど、後半はああやって個人技で点が獲れたことは良かったかなと思います。代わった選手が点を獲ってくれて、非常に良い勝ち方でした」(町中監督)。ファイナルスコアは2-0。これで5試合連続完封勝利を達成したG大阪ユースが、夏の全国連覇へまた一歩前進する結果となった。 G大阪ユースがグループステージと準々決勝を戦ったのは、今回から開催地に加わった大阪。地元ゆえのプレッシャーや難しさもあったようだが、「去年は優勝したから、自分らの代でも優勝したいという想いはあると思いますけど、またリーグ戦とは雰囲気も変わりますし、今年は大阪会場やったので、ちゃんと“全国大会感”が出るかなとは思ったんですけど、やってみたら雰囲気も変わりましたし、連戦が続くことも選手たちがモチベーションを上げている要因ですね」とは町中大輔監督。選手たちは比較的フラットに、目の前の試合へフォーカスして戦うことができていたようだ。 今大会のチームにはさらなる“後押し”があった。この準決勝の2日前。今シーズンから就任しているメンタルコーチの講習会が、対面で開催されたという。 「先生の都合が合って、この良いタイミングで一昨日講習会ができたんです。『そこまで勝っていたらお願いします』ということだったので、そもそも僕らが負けていたらなかった話なんですけど、それをこっちでできたということも、勝因の1つには絶対になっていると思いますね」。そう笑った指揮官は、メンタルコントロールが選手たちに与えている好影響をこう続ける。 「どういう状況にあっても、『今を大事にする』というか、失点しても1点ずつしか返せないですし、その1点をまず獲りに行くとか、1-0で勝っていても劣勢になる時はあるはずなので、そこでもしっかり守るところは守ろうと。1人1人が声を掛け合って、今やるべきことをやっているなという感じはしますね」。指揮官が再三口にする『今やるべきこと』は、間違いなく選手たちにも基本コンセプトとして根付いているようだ。 充実したメンタルと守備の安定感を携えて、いよいよ再びタイトルを掴み取るための、最後の1試合が幕を開ける。ここまで来たら狙えるものは、全部狙った方がいい。守護神の荒木が口にした言葉も頼もしい。「この大会を連覇できるのは僕らだけですし、無失点優勝というのもまた価値が変わってくると思うので、絶対に連覇する気持ちしかないですね」。 2006年と2007年の戴冠で達成して以来となる、チーム17年ぶりの大会連覇を目指して若き青黒が突き進んできた真夏の冒険も、次の一戦が最終章。ガンバのエンブレムを纏った選手たちには、今年も西が丘の夜空に優勝カップを堂々と掲げるイメージなんて、もうとっくに出来上がっている。 (取材・文 土屋雅史)
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