「童顔のサムライ」大谷と羽生が示す日本の方向性──「しなやかさの外交」
投打の二刀流でプレーする大リーグの大谷翔平選手が、純真な笑顔と振る舞いで、野球ファンのみならず日米で社会的な人気となっています。同じように類(たぐい)まれな演技とやはり愛らしい笑顔で世界的なスーパースターの地位を不動のものにしたのがフィギュアスケートの羽生結弦選手です。 文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、二人について「童顔のサムライ」と称し、両選手の共通点に日本が国際社会で進むべき道が隠されていると見ています。北朝鮮をめぐり、各国がめまぐるしく駆け引きを繰り広げる中、「童顔のサムライ」から学ぶ日本がとるべき外交術について若山氏が論じます。 ----------
羽生と大谷と日中韓
羽生結弦は、右足を怪我しながら冬季オリンピックで連続金メダルを獲得し、今や押しも押されもせぬフィギュアスケートの世界王者である。 出身地仙台のパレードには10万人以上が集まり、そのTシャツは、発売前からプレミアがついてインターネット上で売り出されたという。本人は「僕はアイドルじゃない」といっているが、昨今スキャンダルの多い芸能アイドルなどよりはるかに女性人気が高い。どの国で試合をしてもリンクに現れただけで大きな歓声が上がるのだから、彼にアウェイはないというべきだ。 しかしこのところ、スポーツ界の話題はプロ野球の大谷翔平に集まっている。 投げる・打つのいわゆる二刀流。メジャーリーグに入ってすぐの華々しい活躍。もちろんまだ羽生ほどの実績はなく、これからではあるが、すでにあのベーブ・ルースと比べられ、野球の常識を打ち破るかといわれている。そしてこちらも、これまでの野球ファンを超えて、女性人気が高い。 二人とも破格のアスリートであることはまちがいない。これまでの日本選手は世界に挑戦する存在であったが、世界が挑戦する存在となったのだ。 そしてこの二人には共通する特徴がある。身体つきがナヨっとして女性的な柔らかさがあり、童顔であることだ。 高橋大輔もパトリック・チャンも、それなりに精悍な身体つきであり、イチローもダルビッシュも、それなりに不敵なツラ構えをしている。しかし羽生は身体がひょろ長く痩せていて筋肉質なところがほとんど見られない。大谷も身体は大きいが柔らかそうで、少なくともユニフォームの上からは筋骨たくましくは見えない。二人ともその動きが、力強いというより「しなやか」なのだ。 表情も異なるようで実は共通する。羽生はリンク上では闘志がみなぎっているがヤンチャな少年のようで、大谷は常に柔和な赤子のようでさえある。二人とも童顔、いわば童顔のサムライである。 さて話は跳ぶが、少し前に行われた日中韓サミットにおいて、一応の協調がうたわれたのはよろこばしいことである。これまでにも述べているが、世界を広く見わたせば、漢字(韓国は離脱したが)と木造宗教建築の文化圏は、アルファベットと石造宗教建築(歴史的には地中海的一神教といってもいい)の文化圏に包囲され小さく孤立しているのだ。角つきあわせている場合ではない。 筆者はふと、羽生と大谷の共通点が、日本の文化と外交の進むべき道を示しているような気がして、キーボードをたたく。