大学と「野球場」や「市場」が一体化? キャンパス移転、街づくりへのメリットは?
プロ野球とまちづくり
地方都市でも、中心部に近くて利便性の高い土地にキャンパスが移転する傾向は変わりません。それに加えて、20年代後半に地域の再開発と密接に関係した移転が相次いで予定されています。 北海道医療大学は、23年10月、北海道北広島市の北海道ボールパークFビレッジ内に、28年4月を目指して新キャンパスを開設することを発表しました。プロ野球の北海道日本ハムファイターズの新拠点となったことを契機に、この地域の開発が進むなか、北広島市や球団の運営会社とも連携した地域づくりを進めていく予定です。 大学通信 情報調査・編集部の井沢秀部長は、次のように話します。 「ボールパーク周辺には今後、JRの新駅がつくられますし、周辺の千歳市には国産の半導体メーカーであるラピダスの工場が新設されるため、これから地域全体が盛り上がっていくと考えられます。志願者数の確保という点では、大学にとってプラスになることは間違いないでしょう」 関西では、近畿大学医学部および近畿大学病院が25年11月、現在の大阪狭山キャンパス(大阪府大阪狭山市)から、大阪府堺市に新設されるキャンパスに移転する予定です。新キャンパスは、泉北高速鉄道・泉ケ丘駅前に建てられるため、大阪中心部からのアクセスが良く、関西国際空港からも近い好立地です。 医学部が病院とともに移ってくることで地域の医療機能の向上につながりますし、26年4月には看護学部の新設が予定されています。大規模な医療の拠点ができることで、老朽化が進む泉北ニュータウン地域の再生につながることが期待されています。
市場の中に大学が…?
九州では、北九州市立大学が小倉市中心部にある旦過市場内に27年4月を目指して新キャンパスを開設し、情報イノベーション学部(仮称)を新設する予定です。1階部分が市場店舗、2~5階部分が大学という市場と一体化したユニークな構造で、企業と連携して高度なデジタル人材を輩出・供給するだけでなく、北九州市内へのさらなる企業の集積や、街の発展に貢献すると言っています。 こうした例からは、キャンパス移転が大学側の生き残り戦略にとどまらず、地方創生や街づくりの起爆剤として、地域の人々を巻き込んだ一大プロジェクトとなっていることが見てとれます。 「人口減少の傾向が強まるなか、地方経済のほうが今後、都市部よりも先に厳しい局面を迎えると考えられます。逆風のなかで地域の基幹産業をどうつくっていくかを考えると、大学が果たす役割は大きい。そうした考え方に基づいて、キャンパス移転の計画の中に、産学連携や地域連携という要素が組み込まれることが増えています」(リクルート進学総研の小林所長)