創立100周年に熱狂したシント=トロイデン。小さな町のクラブはいかにして変化を遂げたのか、なぜ日本人は愛されるのか【ベルギー発】
「日本人が経営するようになったのはナイス! 感謝しています」
バックスタンド入口の小広場にオープンカフェがあり、そこにサポーターが集まっていた。ひとり、少し古いユニホームを着ている男性がいた。「かっこいいユニホームですね」と声をかけると「私はこのユニホームを着てプレーしていたんです」と返ってきた。もしかして元選手なのか? 「私はアカデミーで19歳まで、12年間プレーしました。トップチームに昇格することはできませんでしたが、リザーブチームでプレーしていました」(ユルン) 彼女のサキナが「町からスタジアムの行進、最高だったよね! 教会の雰囲気も良かったし」と声を弾ませる。 「STVVを応援しはじめて20年。父にスタジアムに連れてこられてファンになりました。祖父もSTVVのサポーターなんです」(サキナ) ――STVVは世代から世代へと継がれていくわけですね。 「その通り!」(サキナ) 「私の家族もSTVVのファン。そして、ここにいる人たちはみんなファミリー。温かな心を持ったファミリー・クラブなんです」(ユルン) 「ただ、少し時代が変わったかも。昔は本当に小さなクラブで、スタジアムは必要最低限の施設でしたが、ファンはもっと騒々しく応援していました。15年前、スタジアムがキレイになりましたが、雰囲気がおとなしくなりましたね」(サキナ) 「スタジアムはモダンにアップグレードされたんですよ。だから、ここに来ることは楽しい。でも昔のほうが雰囲気が良かったのは確かです」(ユルン) 「だけど日本人が経営するようになったのはナイス! 今、STVVはベルギーのクラブのなかで、もっとも健全な経営をしているクラブのひとつになりました。日本人のマネージメントに感謝しています」(サキナ) 今昔の比較を話すのは楽しいのだろう。私はなかなか質問を挟めない。ようやく「誰が好きですか?」とこれ以上ない凡庸な質問をした。 「マッテ・スメッツ!」 ふたりは声を揃えた。 「彼はリンブルフのご当地選手だからね。あとコイタ」(ユルン) 「ちょっと日本人選手の話もさせて。藤田譲瑠チマはトップ。鈴木彩艶も良い。藤田はファイターです。彼のことを愛しています」(サキナ) 「藤田のプレースタイルは、日本人の持つフィロソフィーを表していますよね」(ユルン) 「仕事をする!」(サキナ) 「そして謙虚」(ユルン) 「リンブルフの人たちも一緒。仕事熱心なんです」(サキナ) 「藤田は毎試合100%の力を注ぐ」(ユルン) ――もし100%の力を選手が注げば、勝ち負けなんて関係ないと 「負けても力を出し尽くせばチームを称賛するのみです」(ユルン)
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