欧州議会選で「緑の党」大敗、気候変動目標の継続巡りEU論争激化へ
(ブルームバーグ): 今回の欧州議会選挙は、史上最も環境主義寄りだった欧州議会の終わりを告げた。環境政策から移民に至るまであらゆることへの懸念がポピュリスト政党の伸長につながった。
世界で最も野心的な気候変動戦略を欧州連合(EU)が採用するのを後押しした環境主義政党「緑の党」は、5年前の躍進とは打って変わって大敗し、気候変動対策に前向きなリベラル系も大打撃を被った。一方、ドイツやイタリアなど各国で極右ポピュリスト政党が議席を伸ばした。
この結果が、EUのグリーンディールを覆すことはないだろう。EU経済の脱炭素化を促す包括的な計画を支持した主流派政党は議席の過半数を維持した。だが、域内各国の家計に影響を及ぼす政策が実行に移される際に、政府の決意が弱まる恐れがある。域内の二酸化炭素排出量をネットゼロとする目標を達成するための将来の措置を巡っても、新たに選出された議員の間で論争になる公算が大きい。
コンサルティング会社フライシュマン・ヒラードEUのエネルギー・気候変動担当責任者、マクシモ・ミッチニリ氏は「グリーンディールは生き残るだろうが、活気はなくなるかもしれない」と指摘。「EUは過去10年に採用された措置を守れるはずだが、新議会にとって2040年までの新目標の提案が大きな試金石になる」と続けた。
環境政策を巡る不満から街頭デモが起き、生活費の上昇や移民に対する不安が広がる中で、EU各国政府や欧州委員会は気候変動対策の野心を後退させるよう既に圧力にさらされている。
2030年までに温暖化ガス排出量を1990年比で55%削減するという野心的な目標を達成するための最も厳しい措置はまだ施行されていない。EUは27年に、暖房と交通燃料を対象とする新たな炭素市場を開設する予定だが、これは消費者に影響する。35年までには二酸化炭素を排出する新車乗用車の販売が禁止され、実質的に内燃機関車を博物館行きに近付ける。