”嵐”がついに始まった……ルクレールとノリスの契約延長発表は、新規則導入の2026年F1に向けたドライバー市場激動の第一歩か?
■ライバルチームはどんな選択肢を選ぶのか?
一方でフェラーリは、マクラーレンのような長期の安定性をまだ半分しか手に出来ていない。ルクレールとの契約延長は、フェラーリに不満を覚え、チーム移籍を目論んでいるとも言われていたひとりのドライバーを獲得するチャンスを、ライバルチームから奪い取ることになった。 しかしルクレールのチームメイトであるカルロス・サインツJr.の将来はまだ未定のままだ。昨シーズン中にサインツJr.は、2024年シーズンが開幕する前に将来を確定させたいと明言していたが、現時点ではまだ不透明なままだ。今後数週間のうちに契約延長が発表される可能性もあるが、サインツJr.に他チームからの興味が集まり、決心が揺らぐ要因となってしまう可能性もある。 メルセデスは、2025年のドライバーラインアップは決まっているものの、それも2025年のみ。新レギュレーションが導入される2026年には、ルイス・ハミルトンは41歳になる。彼がその先もキャリアを続けるかどうか、それ次第で状況は大きく変わってくることだろう。 またレッドブルのセルジオ・ペレスの将来にも、今後注目が集まることになるだろう。ペレスはシートを確保し続けるためには、今シーズン大きな飛躍を遂げなければならない。 レッドブルのマシンは、現時点では実に魅力的だ。しかし、フェルスタッペンのチームメイトを務めるというのは並大抵のことではない。そしてレッドブルが2026年から使う、自社製のPUにどれほどの競争力があるのかは、誰にも分からない。
■2026年新パワーユニットの出来を、見通せる者は誰もいない
同様の疑問符は、全てのPUサプライヤーにまつわるモノだ。しかし新規参入の2メーカーよりも、既存の4メーカーの方がより強力なポジションからスタートする可能性が高いのは、間違いないところだろう。 アウディのワークスドライバーとなることは、もちろん実に魅力的なことだろう。しかしF1で最初のシーズンにどんなパフォーマンスを発揮できるかは分からない。 また正式には復帰という形となるホンダは、2026年からアストンマーティンを新たなパートナーに迎える。しかし、今と同じような最高クラスの体制を築けるかどうかは分からない。 ルノーは前回のレギュレーション変更で躓いたが、今回は当時よりも良い仕事をし、アルピーヌに幸先良いスタートを切らせることができるだろうか? ドライバーとそのマネージャーは、現在アクセスできる状況が限られている。その状況で決断を下さなければいけない。一方でドライバーが決まっていないチームは、現在のエントリーリストの外も含めて候補を探していくこととなる。 「2026年を見通せる水晶玉は存在しない」 レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、昨年の段階でそう認めた。 「誰が競争力を手にするのかは誰にも分からない。まったく新しいシャシーのレギュレーションと、完全に新しい空力の哲学が導入されるため、シャシーが重要な役割を果たすことになる」 「電動化と燃焼に二分化されるエンジン(PU)は重要な役割を果たすことになるが、燃料も同様に重要な役割を果たすことになる。したがってゼロから始める我々にとって、そのことは最大のリスクでもあり、最大のチャンスでもある」 「これは興味深い旅路になるだろうし、全てのPUメーカーが信じられないほど一生懸命働いていると確信している」 「新しいメーカーが参入してくる。アウディもそのひとつだ。でもこれは、現在のPUのレギュレーションにおける課題とは、大きく異なるモノなんだ」
Adam Cooper