大統領選と同じ日、アメリカ9州で「大麻」合法化を問う住民投票
犯罪を減だけではなく税収への期待も
アメリカでの大麻合法化で大きなマイルストーンとなったのが、カリフォルニア州が1996年に医療目的に限定した大麻使用を合法化したことであった。アメリカの州としては最大の人口と経済力を持つカリフォルニア州は、ビジネスから社会制度まで様々な分野で新しいものを生み出す風土があり、カリフォルニアの動きに影響を受ける他州は少なくない。カリフォルニア州では医療目的のみで大麻の使用や販売を認めているが、同じ西海岸にあるワシントン州や中西部のコロラド州ではすでに嗜好品としての大麻の生産や販売までが合法となっており、大麻の生産・販売によって得られる税収はリーマンショック直後の2009年に財政非常事態宣言を発令し、現在も税収の確保に頭を抱える州政府にとっても悪い話ではない。 アークビュー・マーケット・リサーチ社は、アメリカ国内の大麻の生産・消費と経済の結びつきに関する調査結果を発表。2015年にアメリカで国内で合法的に販売された大麻の総額は約5500億円に達しており、2014年から800億円以上の増加を見せたと分析している。コロラド州では昨年、大麻販売の売り上げが約1000億円に達しており、120億円以上の税収があった。これは同州におけるアルコール類やカジノからの税収よりも多かったのだという。ワシントン州では2014年以降の大麻関連の税収が1000億円を突破。経済と人口の両面でコロラドやワシントンよりもはるかに大きいカリフォルニアで大麻が合法化された場合、カリフォルニア州の税収がアップするだけではなく、大麻が違法となっている州でも合法化を求める声が一気に噴出する可能性が高い。 8日に行われる住民投票で、9州全てで合法化が可決されるかは不明だ。しかし、自治体が大麻の生産や販売を管理することによって犯罪組織の資金源を断つことが可能となり、大きな税収も期待できるということもあり、州政府側は市民とは異なる目線で大麻合法化のメリットに目を向けている。連邦政府は現在も大麻の合法化に対しては反対の姿勢を崩していないが、大統領選挙と同じ8日に行われる住民投票でアメリカ国内の大麻事情は大きく変わるかもしれない。
---------------------------------------- ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト