イラン核施設爆撃まで議論…イスラエル再報復の3つのシナリオ
(1)両国間の戦争 (2)親イラン勢力の参戦 (3)7つの戦線での苦しい長期戦
イランが1日(現地時間)夜、イスラエル領土に弾道ミサイル約180発を発射し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が「大きな失敗を犯した」として報復を誓ったことで、中東戦争拡大への懸念が最高潮に達している。イスラエルでは、報復のためにイランの核施設を攻撃しようという主張まで出ている。 イスラエルの右派政治家のナフタリ・ベネット元首相はこの日、Xに「イスラエルは今、50年ぶりに中東の地図を変えうる最大の機会を迎えた」とし、「イランの核計画とその中心となるエネルギー施設を破壊し、テロ政権(イラン)を致命的にまで無力化するためには、“いま”行動しなければならない」と主張した。「歴史がドアをノックしているうちに、われわれはドアを開かなければならない。機会を逃してはならない」と強調した。 イランが4月13~14日にドローン(無人機)や弾道ミサイルなど300発あまりでイスラエルの領土を史上初めて攻撃したときも、イスラエルは報復としてイランの核施設に比較的近い場所を爆撃した。イスラエルは4月17日、イランの核施設がある中部イスファハン州を空爆したが、国際原子力機関(IAEA)はイランの核施設には被害がなかったと明らかにした。イランの4月のイスラエル空襲の際には、イスラエルの被害はほとんどなく、イスラエルも核施設そのものには攻撃しなかった。しかし今回、イスラエル内部からは、報復攻撃としてイランの核施設を直接攻撃しようという主張が出ている。 米国ニューヨーク・タイムズは、米国の安全保障分野の専門家らの話から、イスラエルがヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ氏を暗殺したことでヒズボラの戦力が弱体化したため、4月の時に比べイランを攻撃するのはさらに容易な条件にあると指摘した。ネタニヤフ首相の安全保障担当補佐官だったヤーコブ・アミドロール元少将も同紙に対し、イスラエルがレバノンのシーア派組織ヒズボラに加えた被害によってイランの代理勢力の脅威が減ったとし、イランの核施設などに対する攻撃は「考慮されるべきだ」と強調した。 しかし、イスラエルがイランの核施設への攻撃を「歴史的機会」とみなして報復を選択した場合は、多大なリスクに直面することになる。 イスラエルがイランの核施設を爆撃した場合、両国間の戦争は避けられなくなる。また、イスラエルがイランの核施設にかなりの被害を与えることに成功したとしても、イランの戦争遂行能力を完全に失わせることも、また、イランの意志を変えることもできない。イスラエルとイランは国境を接しておらず、直線距離で1600キロメートルほど離れており、戦争はミサイルと戦闘爆撃機による相互爆撃が主な様相を呈するものとみられる 4月と今回のイランによる空襲でイスラエルが受けた被害はほとんどないが、イランにはミサイルでイスラエルを直接攻撃可能な能力があることも示した。 また、イランとイスラエルの戦争にイスラエル周辺の親イラン勢力が参戦する可能性もある。 イラク内の親イラン武装勢力は1日、イスラエルがイランを攻撃するためにイラク領空を通過する場合、イラク内の米軍基地が攻撃目標になると明らかにした。イランへの攻撃の直前、イスラエルのテルアビブにあるヤッファ地区では、パレスチナの武装勢力のメンバー2人が街頭で銃を乱射した。イスラエル内外から加えられる「二重の脅威」への懸念が現実化したものだと、フィナンシャル・タイムズは指摘した。 イスラエルが長期戦という負担を抱える可能性も高い。イスラエルがイスラム組織ハマスの撲滅を目標に掲げて始めたガザ戦争は、7日で1年を迎える。戦争による社会・経済的負担によって、イスラエルはガザ戦争が始まった昨年の第4四半期には経済成長率が前年同期比でマイナス19.4%を記録し、今年の第2四半期もわずか0.3%の増加だった。 インテルは、6月にイスラエルに新しい工場を建てるための250億ドルの投資計画の撤回を発表した。政府系ファンドとしては世界最大のノルウェー中央銀行投資管理部門(NBIM)は9月4日、イスラエルの軍事作戦を支援する企業に対する株式投資を撤回する可能性があると発表した。イスラエル経済で大きな部分を占める先端技術のスタートアップ企業は、今年からイスラエルで活動を中止または撤退している。イスラエルの戦力の4分の3を占める予備軍は、長期戦ですでに生計を脅かされており、経済にとって大きな損失になっていると、5月から報道され始めた。 建国以来のイスラエルの軍事ドクトリンは「敵の領土で、短期戦で、決定的勝利を収める」というものだ。しかし、最近はこの戦略から大きく外れている。南ではパレスチナのガザ地区で1年にわたる戦争を行っている。ヒズボラとの衝突で北部でも戦争を行っている。イランとも戦争を行うことになれば、イスラエルは7つの戦線に直面することになる。ガザ地区のハマス、ヨルダン川西岸のパレスチナ武装勢力、レバノンのヒズボラ、シリアとイラクの親イラン武装勢力、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)、そしてイランだ。これらの攻撃力がイスラエルに決定的な打撃を与えられないとしても、長期間加えられる場合は、イスラエルにとっても多大な負担になる。 イスラエルのネタニヤフ首相は、来月の米国大統領選の結果を待ちつつ、休戦交渉を蹴って攻勢に出た。そのためイランもイスラエルとの対決は避けられないと判断し、長期戦に誘導する戦略に着手する可能性がある。双方ともに戦争拡大を目前に控え、真実と選択の瞬間に立った。 チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )