客が減るディズニーリゾート…でも売り上げは過去最高。新エリアだけじゃない「強さ」徹底分析
「高い利益率」を誇るオリエンタルランド
オリエンタルランドは売上高だけではなく、営業利益も過去最高の水準になっています。では、営業利益率の過去10年はどのように推移しているのでしょうか。 図表6は営業利益率の推移を示したものです。 2014年から2019年までは営業利益率は23~25%前後で推移をしていて、高い利益率を持続的に達成できていました。その後新型コロナウイルスの影響もあり、赤字に転落するも、直近の2024年3月期では営業利益率は27%と過去最高の水準です。 次にオリエンタルランドのP/Lの構成はどうなっているのかを確認しましょう。 2014年3月期と2024年3月期を比較すると次のとおりです。 10年前と比較して営業利益率は3%改善していますが、その大きな要因は売上原価が下がったことによります。 オリエンタルランドの単体の売上原価明細を確認すると、2024年3月期は、2014年3月期と比較したときに、売上高に占める商品原価が2%下がっていることに加えて、原価に計上している営業資材費、販促活動費等が下がっていることで、売上原価全体が改善していることになります。 つまりオリエンタルランドにおいては、顧客単価を上げながらも原価率をいかにしてコントロールするかが営業利益率を上げるための要諦といえます。
ディズニー・シーに匹敵する巨額投資
2024年3月期において過去最高の業績を叩き出したオリエンタルランドですが、今期2025年3月期も引き続き好調を継続しそうです。 決算短信によると売上高は24年3月期比10.7%増の6847億円、営業利益も2.8%増の1700億円と増収増益が予想されています。 増収増益の背景としては、2024年6月には8番目の新テーマポートとなる「ファンタジースプリング」がオープンしたことがあげられます。「ファンタジースプリング」とは、“魔法の泉が導くディズニーファンタジーの世界”をテーマとし、ディズニー映画を題材に以下から構成されるエリアとなっています。 「フローズンキングダム」(『アナと雪の女王』をテーマとしたエリア) 「ラプンツェルの森」(『塔の上のラプンツェル』をテーマとしたエリア) 「ピーターパンのネバーランド」(『ピーター・パン』をテーマとしたエリア) 「東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテル」 当分はこの新エリアで持続的な成長を目指すと思いきや、オリエンタルランドはすでに次の一手を打って出ています。それがクルーズ事業です。 オリエンタルランドの2025年3月期の第1四半期の決算説明資料によれば、これまでのノウハウを活かして、新規事業としてクルーズ事業を展開し、ディズニーならではの非日常体験を通じて、新たな体験価値を創出していくとのことです。 就航予定年は2028年度(2029年3月期)であることから、いまからおよそ4年後です。 客室数は約1250室で、乗客定員は約4000人が想定されています。2024年3月期の東京ディズニーリゾートの来園者数が2750万人前後であることから、1日あたりの平均の入園者数は7万5000人前後になります。つまり、クルーズ事業では、東京ディズニーリゾートの1日あたりの5%強が乗客数と見込める計算になります。 航路としては首都圏の港を発着する周遊クルーズがメインで、航海日数は2泊~4日程度の短期航路になっています。単価は、一人当たり10万円~30万円と幅広い価格帯が用意されています。 図表3でもみたように、現在の顧客単価は1万6000円程度なので、宿泊込みとはいえこの金額がいかに高いかがわかるかと思います。 ここで注目したいのが投資額でその額なんと約3300億円です。これは、船の造船費に加えてその他開業費用を含んだ金額になっています。 2001年にオープンした東京ディズニー・シーの総工費は約3350億円、上述したファンタジースプリングの投資額が約3200億円であることを踏まえると、この投資額がいかに大きいかはイメージできるかと思います。つまり、このクルーズ事業はディズニー・シー開業に並ぶぐらいインパクトある投資ということなのです。 実際、単純計算で1人1泊10万円で4000人で1日4億円の売上高になり、1年で1460億円にもなります。これは、24年3月期の売上高の23%にもなるほどです。仮にクルーズ事業の単価が上がればもっと売上高は増えることが予想されます。 このように高い客単価とおそらく通年を通してかなりの高い稼働率を見込めることを踏まえると、大きな売上高が期待できるのです。
村上 茂久