温暖化の永久凍土地帯、森林のCO2吸収量が増加…アラスカ州で大阪公立大などのチーム確認
米アラスカ州にある永久凍土地帯で、森林の二酸化炭素(CO2)吸収量が増えていることを確認したと、大阪公立大などの研究チームが発表した。温室効果ガスの排出が地球規模で増加した影響などにより、一帯では樹木が成長するなど緑化が進んでいることもわかったという。論文が米科学アカデミー紀要に掲載された。
永久凍土は、地下の温度が2年以上連続して0度以下になる土壌。夏季は表層が解けるため植物の生育が可能だ。こうした地域は過酷な環境下にあり、温暖化による生態系への影響など長期的な環境変化を調べることが難しかった。
大阪公立大の植山雅仁准教授(地球環境科学)らのチームは、永久凍土地帯の森林にCO2吸収量のデータを30分ごとに自動収集する気象観測タワーを設置し、2003年から調査。機器の管理が難しい氷点下30度以下の厳冬期にも研究員が現地に滞在して観測を続けた。
その結果、03~12年の10年間に比べ、13~22年にはCO2吸収量が20%増加したことがわかった。降水量は年平均で約100ミリ増え、CO2の濃度も約30ppm上昇していた。平均気温や凍土の深さに変化はなかった。
植物は水とCO2を材料に光合成をしている。CO2濃度が上昇すると光合成が活発になるため、樹木の成長も進んでいるとみられる。
植山准教授は「温暖化の影響を見極めるには長期的な観測が不可欠であり、今後も継続したい」と語る。
名古屋大の檜山哲哉教授(水文気候学)の話「20年間、高品質なデータを集めた有意義な成果だ。永久凍土が解けて水分が増えすぎれば植物が枯れ、CO2の吸収量は減る可能性もある。様々な角度から影響を検討する必要があるだろう」