前例ない広域避難 専門家「転居増えると関連死増の傾向」30人認定の災害関連死めぐる今 能登半島地震
■関連死申請も市や県から連絡無く「はやくしてほしい」 2月に入り、竜夫さんは輪島市に災害関連死で亡くなった人に支給される災害弔慰金を申請しました。能登半島地震では住民からの申請について、県が市や町と合同で審査会を開くことになりました。 弁護士や医師ら5人による審査会で災害関連死が認定されれば、自治体へ答申した後、首長による決定をもって遺族に対し最大500万円が支給されます。精神的にも金銭的にも、遺族の生活再建に大きく関わる弔慰金の支給。審査会の日程について、竜夫さんへは事前に県や市からの連絡はありませんでした。 中竜夫さん 「はやくしてほしいわけよ、結果を出してほしい。もし地震が無かったらあそこに避難しなくて、ちゃんと家におって正月できたはず」 地震から4か月あまり経った今月14日、ようやく初めての審査会が開かれ、その日の夜、竜夫さんのもとに市から連絡がありました。 ■1回目の審査会開催 30人認定へ 中竜夫さん 「ちょうど審査あったその日、認定されたと言われた。良かったなと思って、ちょっと気持ちが楽になった」 1回目の審査会では珠洲市、輪島市、能登町の合わせて35人について審査が行われ、このうち30人が災害関連死に認定されました。 50年以上防災の研究に取り組む専門家は今回の地震による避難の特異性を指摘します。 減災・復興支援機構 木村拓郎理事長 「能登半島地震の避難は前例がない。かなりの広域避難が行政から奨励されたということで、かつてあまりないケース」 ■能登半島地震 馳知事の避難策は「あまりないケース」 発災から間もなく、馳知事が打ち出した広域避難策。 馳知事 「速やかに2次避難所に移っていただくようにお願いします」 結果、県内のほか福井や富山まで2月15日をピークに、2次避難所には最大で5275人が身を寄せました。 馳知事 「速やかに運ぶということが関連死を防ぐために必要なことだと思います」 一方、高齢者にとっては転居が大きな負担になると専門家は指摘します。 減災・復興支援機構 木村拓郎理事長 「高齢者の転居が多くなるとどうしても環境が変わって体調が変わって関連死というのは非常に多くなる傾向がある。結局広域避難は関連死対策にならなくて、かえってマイナスな制度になってしまうという気はする」 2016年の熊本地震では、死者273人のうち8割近くにあたる218人が災害関連死と認定されました。未だ70人以上の遺族が審査を待つなか、県は今後、月に1回程度審査会を開くとしていてこのままのペースで進めばあと数か月はかかる見通しです。 減災・復興支援機構 木村拓郎理事長 「今回なんでここまで4か月、5か月時間がかかったのか不思議な感じはする。遺族にとっての生活再建はスピードがすごく大事、早めに審査して出るのであれば出していただく。」 中竜夫さん 「これから生活していくために必要なのはやっぱりお金だから、年金だけではやっていかれんし。今までかあかしていること俺がしているけど…どういえばいいかわからん」 発災からまもなく5か月が経とうとする中、被災者の苦悩が癒えることはありません。