J2新記録となる開幕9連勝 湘南ベルマーレはなぜ強いのか?
タテパス。28得点に対して4失点と、攻守において格の違いを見せつけている今シーズンのベルマーレを変えたキーワードがこれだ。チョウ監督は言う。「サッカーは単純なもので、ボールを前に入れられたら相手は嫌だし、頭を越されても嫌だし、下げられたら逆に楽になる。相手にとって嫌なことが、自分たちのストロングポイントであれば一番いいわけです」 ヨーロッパのリーグを中心に海外のサッカーに造詣が深く、テレビ中継でこまめに試合をチェックしている指揮官は、バルセロナやバイエルン・ミュンヘンをよく引き合いに出す。画面越しに凝視するのは究極とも言えるポゼッションサッカーではなく、なぜバルセロナやバイエルンの攻撃が相手に脅威を与えるか。答えは「タテパス」にあった。 「バルセロナも最後は、シャビやイニエスタがタテパスを入れてくる。バイエルンも980本ものパスをつないで、成功率92%と恐ろしい数字をマークした試合があったけど、僕はそういうチームにするつもりはない。パスをつなぐことはあくまで手段。パスをどうつなぐか、最終的に何を得られるか、ということのほうが大事。パスは1試合で400本から500本でいいと僕は言っている。その中でタテパスの比率を45%から50%にする。隙を見たらタテパスを入れて、ディフェンスラインと勝負できるような攻撃があれば相手も休めない。相手にとって何が嫌かと言えば、リードしている僕たちにどんどん攻められること。相手が守り疲れするようならば、後半に力を発揮できるわけですから」 もちろん、タテパスは相手にボールを奪われるリスクも生じる。そうなれば即座にボールホルダーを数人で囲んで奪い返す。2年前から継続している全員守備、全員攻撃によるハードワークが徹底されているからこそ、タテパスの脅威も相乗効果で増す。攻撃は最大の防御とばかりに、菊地が続ける。 「取られたら取り返すというか、高い位置でプレッシャーをかけて奪うのはウチの特徴でもあるので。チャレンジするパスに対しては、監督はそんなに怒らないというか、よかったぞと言ってくれるので、その意味では思い切ってタテパスを出せていると思う」